クジラと人の関わりって?太地町立くじらの博物館にて企画展 『鯨と人の営み展』が開催中! | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

耳ヨリくじら情報

2023.12.13

クジラと人の関わりって?太地町立くじらの博物館にて企画展 『鯨と人の営み展』が開催中!

Share :

8月9日から太地町立くじらの博物館にて開催されている企画展『鯨と人の営み展』。太地町立くじらの博物館と(一財)日本鯨類研究所の初共催で、「第1期/鯨ヒゲ」「第2期/鯨歯・骨・革・郷土玩具など」「第3期/ベストセレクション」の3つのテーマに分けた展示を2024年3月17日まで開催しています。現在展示中の第2期(2月18日まで)は鯨歯で作られた繊細な形のアクセサリーや土地の歴史を受け継ぐ郷土玩具など、クジラと人々の縁の深さを感じられる作品約300点を展示中です。クジラの町と呼ばれる太地町ならではの作品も多く展示してあり見応えのある展示となっています。

まず入口にあるのは、クジラを知るために(一財)日本鯨類研究所がどのような調査・研究をしているのかをポスターや映像にて展示しているブースです。クジラがどこを回遊しているのかクジラの種類、年齢などを様々な方法で調査していることが分かります。

太地町の高い技術力をもった彫金師のコレクション

北市三郎コレクション

太地町出身で戦前、彫金師「北千明」として東京で活躍した北市三郎(きた・いちさぶろう)氏の技術の高さが光る印材やブローチなどの作品が展示されています。北氏は戦後太地に戻ると、アメリカ在住の養父から入手したアワビや真珠貝などの貝やべっ甲などに加え、鯨歯を材料とした様々な作品を制作していたといいます。散歩に出かけるたびに、モチーフとなるような植物を見つけては持ち帰っていたという北氏が、作品のイメージをしたためたスケッチブックも展示されています。

鯨歯印材

鯨歯は堅く長く使用してもすり減らず長持ちするため、高級印材の材料として使用されていました。鯨歯で作られた印材は、鯨歯の形に添ったフォルムを生かした「曲がり」と呼ばれるものと、円柱形の2種類があります(展示品は曲がり)。鯨歯製の印鑑は長年使っていると朱肉を吸って歯が下からピンク色に染まっていきます。展示では、現在北家で実際に実印として使用されている、変色した印鑑の写真を確認することができます(写真上)。

鯨歯パイプ

パイプは鯨歯加工品の中でもメジャーな存在です。北氏が手掛けたパイプ(写真上)は口に当たる部分が盛り上がったような形をしているのが特徴的です。
製作者によって形が違うので他の展示されているパイプと比較してみても楽しめますね。
博物館の2Fに展示されている鯨髭製の茶室天井も北氏のデザインをもとに製作されたものです。大変珍しいものなので、是非見てみてください。

今となっては貴重な一生ものの実用品やアクセサリーなどの展示

他にもクジラの素材を使用して作られた作品がずらりと展示されています。様々な作品が並んでおり1ケース見るだけでも見応えがありますが、その中から数点をご紹介。

鯨歯は、アクセサリーの素材としても好まれています。アクセサリーも長く使用していると、肌に触れている部分や日に当たっている部分が白色からアイボリー色に濃くかわり、深みを増していきます。育つ素材として、鯨歯は趣のあるものなのです。

鯨骨の作品
持ち手部分が鯨骨で作られたリール

鯨骨は鯨歯より手に入りやすく柔らかいため、様々な用途で使用されていました。今回の展示では、鯨骨で作られた骨刀やステッキ(写真上/左)などが展示されています。他にも嗜好のアイテムとして釣りで使用されるリール(写真上/右)があります。リールの持ち手部分に鯨骨が使用されていて、クジラが身近な存在であったことがわかる1品です。

太地町ならではの展示も

鯨車
お弓神事で使用されるクジラの形をした縁起物

郷土玩具が展示されているケース内には一風変わった鯨車(写真上/左)があります。こちらは太地町の伝統行事「お弓神事(おゆみしんじ)」で使用されるセミクジラの形をした木彫りの縁起物「セミ」(写真上/右)をモチーフに制作された作品です。この鯨車は、なんと太地町に住む一人の男性の「太地に民芸品がないから何か作らなければ」という想いから誕生した手作りの民芸品ですが現在では、残念ながら製作されていません。

持双船(もっそうぶね)とクジラ

他にも船を使ってクジラを運んでいるような民芸品もあります。こちらは古式捕鯨の時代、クジラを岸まで運ぶために、仕留めたクジラにロープを通し、持双船(もっそうぶね)と呼ばれる2艘の舟の間にクジラを縛り付けた様子を表現したもので、実際に行われていた運搬方法を模したものです。

スポーツ用品の部品にマッコウクジラが使用されていた!

テニスのガット

なんと昔はスポーツ用品にもクジラが使用されていました。今は化学繊維で作られている軟式テニスのガットですが、かつてはマッコウクジラの頭の中にある千筋(せんすじ)と呼ばれる繊維の束が加工されガットが作られていました。鯨筋ガットと呼ばれ、他のガットよりテニスボールがよく飛ぶというメリットがありました。しかし雨や湿度に弱いため、雨の日はガットが切れたり、伸びたりすることがあり、防湿クジラガットも開発されました。

捕鯨が盛んに行われていた時代は生活用品や郷土玩具のモチーフにクジラが使われており、日常にクジラがあふれていました。展示にもあるように骨、歯、革、油と余すことなく使われ、クジラと人は密接にかかわっていたことが分かります。
商業捕鯨が再開され、今後クジラと人がどのような関係になっていきたいかを考えながら見るのも楽しいかもしれないですね。

■鯨と人の営み展
太地町立くじらの博物館と(一般)日本鯨類研究所の共催で、所蔵しているクジラのヒゲや歯・骨などから作られる道具や工芸品、クジラをモチーフとした郷土玩具など、3つテーマで展示入替を行いながら、クジラと人が営んできた歴史の一部を希少な資料を通して紹介しています。
「第2期/鯨歯・骨・革・郷土玩具など」2024年2月18日まで
「第3期/ベストセレクション」2024年3月17日まで

開催場所:太地町立くじらの博物館
〒649-5171 和歌山県東牟婁郡太地町太地2934−2
営業時間:8:30~17:00

Share :