耳ヨリくじら情報
2023年で開催8回目を迎えた、国内最大級のドローン展示会「Japan Drone2023」。もはや常連となっている『日本鯨類研究所』ですが、今回は、展示会でのお披露目が初めてとなる、水素燃料飛行実験機「飛鳥改五 丙二型」(以下、「飛鳥改五 H2」)を伴っての参加とあって、注目度は相当なもの。会期中には、国会議員も訪れるなどして大きな賑わいを見せました。
小さな量で多くのエネルギーを生成できる水素を活用した燃料電池でゼロエミッションに貢献
「飛鳥改五 H2」がなぜ各方面から注目を集めているかというと、『日本鯨類研究所』が2021年より毎年続けて「Japan Drone」に出展している、「VTOL-UAV(垂直離着陸自律型無人航空機)飛鳥」(以下、「VTOL-UAV 飛鳥」)を含む自律型無人小型航空機のほとんどがリチウムイオンバッテリーを搭載しているのに対して、これに替わる手段として水素燃料電池システムを搭載しているから。「水素燃料電池システム」とは、水素と大気中の酸素を反応させることによって電気を生成するデバイスのこと。水素のエネルギー密度は非常に高く、小さな量で多くのエネルギーを生成させられることから、水素を活用することはゼロエミッションにもつながるといわれています。
「飛鳥改五 H2」の水素燃料給電システムは、実用化に向けて2020年から研究・実験が重ねられてきていますが、飛行実験機に実装したのは今年が初。2025年春までに実用化する計画のもと、実証実験がスタートされたばかりです。
実用化に向けての目標スペックは、搭載重量10kg時に航続距離200km以上。また、万が一、墜落した場合に高圧ボンベの破裂や火災といった事故が生じないよう、安全装置も追求されています。
「飛鳥改五」をもとに「飛鳥改五 H2」を製作
新たな鯨類調査手法への活用を目指して、2019年に開発着手となった「VTOL-UAV 飛鳥」ですが、2021年の「Japan Drone」でもお披露目された実証機「飛鳥改四」からさらに改良を重ねて、現在では、実用機「飛鳥改五」が完成。搭載重量2kgで航続距離100km(洋上での実績104km)、最高速度160km/h(長距離飛行時・巡航速度80km/h)のハイスペックで、南極での実証実験においても、安定した飛行を実現しています。
「Japan Drone 2023」では「飛鳥改五」が撮影した洋上のクジラ映像も!
今回、「Japan Drone 2023」の『日本鯨類研究所』ブースに展示された「飛鳥改五 H2」および「飛鳥改五」の真下の床には、機体本体およびマルチコプターが撮影した洋上のクジラ映像を投影。洋上でドローンを飛ばすことによって、私たちにどんな映像が届けられるのかが一目でわかることから、ブースの前で思わず足を止めて見惚れるお客さんもチラホラ。
会場で案内係を務めていた『日本鯨類研究所』の吉田崇さんと久場朋子さんによると、来場者からも「どうしてクジラの撮影に焦点を絞ってドローンを開発されたのですか?」の質問が多く寄せられたといいます。そのたびに、ドローンの活用によって、クジラの目視観察員不足や、航海困難域などによる目視限界を補完できることや、生体観測におけるさらなる多くのデータを取得できるようになることの意義を説明している、同研究所の研究員たち。彼らの想いとドローン開発者の熱意によって、2025年春までの「飛鳥改五 H2」実用化計画は着実に達成されるに違いありません。