「クジラに偏見を持つ人は以前と比べて減っている。天然育ちの安心安全で身体にもいい食材だから、今こそ鯨肉のよさを見直してほしい」『羽田市場』代表取締役社長CEO野本良平さんinterview | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2023.05.10

「クジラに偏見を持つ人は以前と比べて減っている。天然育ちの安心安全で身体にもいい食材だから、今こそ鯨肉のよさを見直してほしい」『羽田市場』代表取締役社長CEO野本良平さんinterview

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日本各地で水揚げされた鮮魚を、市場を通すことなく飛行機や新幹線で運び、捕れたその日のうちに飲食店や小売店に届けるビジネスモデルで一躍その名を馳せた『羽田市場』。2016年には、一般消費者向けに立ち飲みスタイルで水揚げしたばかりの鮮魚を楽しめる飲食店を立ち上げ、以降、フランチャイズを含め全国に店舗を増やし続けています。さらに自社のECサイトでは、柵や刺身のほか魚介類の加工品を販売。家飲みが楽しくなる品ぞろえだと好評です。そのなかには、「くじらベーコン切り落とし」や「くじら赤身切り落とし」、鯨肉の希少部位を選りすぐった「家飲み晩酌【鯨】5点セット」もラインナップされていますが、お客さんからはどんな声が上がっているのでしょうか? 『羽田市場』代表取締役社長CEOの野本良平さんにお話を伺いました。

クジラ初体験で「リピ確定」とコメントをくれる消費者も

――ECサイトではさまざまな魚介を取り扱っていらっしゃいますが、そのなかでクジラに対するお客さまの反応はどうですか?

「クジラを初めて食べたという人からの反応もいいですし、リピーターもすごく多いです。うちのメルマガ会員は全部で20万人くらい、アクティブユーザー(活発に、あるいは日常的に利用している人)だけでも4万人いるんですけど、彼らから送られてくるコメントのほとんどは好意的なもので、“リピ確定”“初めて食べたけど旨い!”というコメントもすごくたくさん届くんですよ。特に、売り始めたころはびっくりするくらい売れました。東京駅直結の『羽田市場食堂 東京駅店』ではクジラのユッケを250円で出していたんですけど、それがすごく好評で、さらに多くの人に鯨肉を楽しんでほしいと思っていたので、反響があったことで改めて、クジラをおいしいと思う人が多いことを実感しました」

子どものころにクジラを食べることが日常的だった年配者にはクジラファンが多い

――ECサイトで販売を開始する前にもお客さんからの要望はあったのでしょうか?

「特に年配の方からの要望は多かったですよ。子どものころ食べていた世代って、懐かしさもあって食べたくなるようですけど、あまり売ってないですからね。僕は以前、『すし銚子丸』に勤めていたことがあるんですけど、その当時も、年配のお客さんから“クジラないの?”って訊かれることは多かったです。だけど店側からしたら、昔みたいにクジラが安くないから、使いきれなかったときの損失が大きい。それもあって、クジラには手を出さないほうがいいと思っていたところもあるんですけど、一定数のファンがいるし、養殖物のように人間の手が加わっていないぶん、天然育ちのクジラは身体にいいことは明らかだから、ひとりでも多くの人にクジラのよさを伝えられたらいいなという思いもあったんですよね」

より効果的な宣伝方法を考えることはクジラ業界にとってひとつの課題になってくると思う

――ということは、SNSでの発信にも力を入れられているのですか?

「難しいところですよね。今の若い人たちは記事ってほとんど読まないでしょう? テレビも観ないし、TikTokやYouTubeにしても、倍速で流すからどんどん次の情報に流れていく。実際TikTokとかって、必要な情報だけほしい人にはちょうどいいんですよね。テレビみたいに通販CMに邪魔されることもないし。でもだからといって、フォロワーの多いインフルエンサーに宣伝をお願いすればいいかというとそうでもない。フォロワーが多い人って、結局、お互いに“いいね”し合っているだけだったりするから、発信する情報に興味持ってもらうところまでつながらない場合がほとんどなんですよ。それだったら、高くついたとしても芸能人に発信してもらったほうがよっぽど結果を出せます。たとえば、人気の女優さんが「毎日クジラを食べています」って発信したら、“あんなにきれいな人が食べているんなら絶対真似したい”ってなるでしょう? 実際、クジラはタンパク質豊富で脂質は少なく、持久力維持にも老化防止にも役立つとされる成分が豊富に含まれているけど、そのことを知らない人はすごく多いですよね。あともうひとつのポイントとしては、都市部と地方とでは宣伝の仕方を変えたほうがいいってこと。都心だと芸能人のSNSに反応する人が多いといっても、地方に行くと新聞の折り込みチラシが未だにすごい力を持っている。クジラ業界の人にとっても、そうしたバックグラウンドを考えて発信することはこれから大きな課題になってくると思います」

クジラのおいしさは冷凍方法に大きく左右される

――確かにそうですね。ところで、『羽田市場』で扱っている鯨肉はどちらから卸しているのでしょうか?

「勝どきの『スクーナー』です。共同船舶から鯨肉を仕入れて卸と加工をやっている一次店です。うちで扱っているベーコンや刺身は、すべてここで加工していたものです。原料となる鯨肉はアイスランド産ナガスクジラなんですけど、個人的には、アイスランド産ナガスクジラって一番おいしいと思っています。以前、銀座の飲食店『土佐料理 祢保希(ねぼけ)』で生肉を食べ比べさせてもらったことがあるんですけど、アイスランド産ナガスクジラが断トツでした。その理由はやはり冷凍方法にあると思います。捕れたてのクジラを洋上ですぐに冷やしこんだものは鮮度がまるで違う。沿岸で捕れたものも現地で食べたら新鮮でおいしいんだけど、陸まで引っ張ってきて解体することもあって、どうしても時間が経つと色も味も落ちてしまうのが難点ですよね」

個人経営の飲食店には鯨肉はうってつけの食材

――『スクーナー』から卸した鯨肉はB to B(企業向け)にも鯨肉を販売されているのですか?

「B to C(一般消費者向け)のみです。うちは『スシロー』や『大戸屋』、『さかなや道場』、『はなの舞』などと取引させていただいたり、『磯丸水産』とコラボしたりしているんですけど、どこも大手なこともあって、現状はB to Bでのクジラのニーズはないですね。個人店さんだと鯨肉は結構出ると思うんですよ。馬刺しと同じ感覚でメニューに載せたいと考える個人店は多いはずです。ベーコンにしても刺身にしてもお酒に合うから、一皿でたくさんお酒も頼んでもらえるし。それって店にとっては一番うれしい食材ですよね」

反捕鯨団体からのクレームは一時期と比べて激減していると実感している

――最近は、メニューに鯨肉がある個人商店も増えてきていますよね。一昔前はクジラに偏見を持つ人も多かった印象ですが、その点に関して肌感としてはいかがですか?

「少なくとも都心部では、シーシェパードとかの影響を受けている人はほとんどいなくなってきているように思います。昔はECサイトで鯨肉を売ったら、“お前んとこの会社は捕鯨を応援するのか?”っていう苦情も多かったけど、自分の周りでは最近はそういうのは聞かないです。だけど反対に、クジラの栄養価やおいしい食べ方について知っている人も減っています。そりゃそうですよね。鯨肉の値段が高騰しているんだから。なかなか買えないですよ。僕はクジラの尾の身は地球上で一番おいしいお刺身だと思っているけど、卸値でキロ3万前後のものなんて、日常的にはとても手が出ないと思います」

おすすめのクジラ料理は銀座『祢保希』のハリハリ鍋

――尾の身もそれ以外の部位も、外食で召し上がることはありますか?

「食べますよ。年に100日は出張が入っているから、出かけた先々で食べることもあるし。長崎のクジラは特においしかった記憶があります。東京だと、先ほども言った『土佐料理 祢保希』のハリハリ鍋。これは本当に絶品だから、この記事を読んでくれている人にも機会があったら食べてほしいですね」

遺伝子操作もされていない天然のクジラは安心安全で身体にいい

――『羽田市場』でもハリハリ鍋セットを販売してほしいです!

「確かにそれはいいですね。天然育ちのクジラは遺伝子操作もされていない安全食材だし、身体にいい栄養素もたくさん含んでいるから、クジラのよさを知ってもらえたらもっとファンが増えると僕も思います。いろんなものが値上げされているこの時代に、一頭捕れば相当量をみんなで食えるし、貴重なたんぱく源にもなるわけだから、宣伝の仕方や売り方によってはニーズが倍増していくんじゃないかなと思っています」

――『羽田市場』も一緒になってクジラ業界を盛り上げてくださるとうれしいです。今日はどうもありがとうございました。

ニュース番組やワイドショーにも登場することの多い『羽田市場』の料理を、一度は食べてみたいと思っていた人は多いはず。これを機会にぜひECサイトを覗いてみてはいかが? その際は、鯨肉のラインナップをチェックすることも忘れないでくださいね。

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