都内のクジラ料理専門店のなかでは歴史が長く、遠方から足繁く通うファンも多い『くじらのお宿　一乃谷』。クジラファンに知らない人はいないほどの有名店なので、きっと来店したことがある人も多いのではないでしょうか。店長の谷光男さんは、クジラを調理しはじめて約36年。宮城県・仙台で開業した後、東京・神田に移転開業して以降、鯨肉普及のためのイベントなどでもたびたび腕を振るって、たくさんの人にクジラのおいしさを伝え続けています。

ひとりでも多くの人にクジラのおいしさを知ってほしいから、物価高でも価格は上げたくない

しかし、その36年の間にクジラのファン層を拡大させることができたかというと、「なかなか難しいね」とのお答え。なぜかというと、特に近年は物価高の影響で鯨肉が高く、気軽に食べてもらうことができないから。同店では、谷さん自ら捕鯨会社から直接買い付けすることなど、価格据え置きのままで料理を提供し続けるためにできることを試行錯誤していますが、「ここまで材料費が上がっても料理代をキープしようとすると、結局は自分の首を絞めることになるんだよね」と明かします。それでも、お客さんのおいしい笑顔を見たいと手頃な価格で幅広いメニューを用意しているだけでなく、年に数回は、同店イチオシのさまざまなクジラ料理をお得に味わい尽くせる「くじら祭り」も開催しています。

また、クジラ特有の臭みをしっかりと抜くため、肉に熟成をかけているのも同店の特徴。そのため、ほとんどのメニューがクジラ初心者でも食べやすく、メニューによっては、「これ本当にクジラなの？」と疑ってしまうほどです。

そのなかから、今回まず紹介させていただくのは、紅白の肉の美しさが圧巻の「高級鯨の鹿の子　しゃぶしゃぶ」（1人前3,500円・2人前より注文OK）です。

「鹿の子」とはクジラの顎の付け根部分の肉のこと。これをシャキシャキ食感が楽しい水菜とともに、たっぷりと時間をかけて煮出したクジラのスープにさっとくぐらせて楽しむ、なんとも贅沢なメニューです。鹿の子、水菜はどちらも生で食べられる新鮮なものなので、くぐらせる時間は数秒でOK！　器によそったら、コラーゲンが豊富な濃厚スープをかけていざ実食。クジラのうまみが溶け出したスープを吸った鹿の子が、口のなかを豊潤な味わいで満たしていきます。

鹿の子を楽しんだあとは、雑炊やうどんで〆るお客さんも多いといいますが納得。コク深いスープは、最後の一滴まで体内に吸収しなければもったいないことこの上なし！　米や麺にしっかりと吸収させて最後まで堪能したら、翌朝お肌がぷるぷるになること間違いなしです。

そしてもう1品ピックアップさせていただくのは、何度も味の改良を重ねて完成したという「鯨おにぎり」（1個350円）。赤肉をミンチにして煮込んだものを調味料などと一緒に混ぜ込んだご飯で握った一品ですが、あまりのおいしさに「混ぜ込みご飯のもとを販売してほしい」という声も多いのだとか。うまみ、辛み、まろやかな甘みのバランスも抜群で、やみつきになること必死です。

食料危機の救世主として昆虫が注目されているけど、クジラならたった一頭で大勢のタンパク質不足を解消できる

「最近は、将来の食料不足問題を解決するために昆虫食が注目されているけど、クジラならたった一頭でその何倍ものタンパク質を補えるんだから、みんなにもっとクジラに関心を寄せてほしいなと思います。しかも、クジラは身体にいい栄養素が豊富で脂肪はほとんどない。美容や健康にいいことを知ったら、食べたいと思ってくれる人も増えるんじゃないかな」と話す谷さん。

たくさんの人にクジラの魅力を知ってもらいたいとの熱量に満ちている店主なので、お店がすいているときであれば、ぜひ気軽に「おいしかったです」と声をかけて会話してみてくださいね。

■くじらのお宿 一乃谷

住所：東京都千代田区内神田2丁目7-6 ゆまにビル地下1階
電話：03-3254-6096
定休日：日曜日
営業時間：昼　11:30-14:00(ランチタイム)
　　　　　夜　17:00-23:00(月－金)
　　　　　　　17:00-21:00(土)

※営業日や時間は最新の情報をHPなどで確認してください。

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