耳ヨリくじら情報
年齢を重ねてから、新しいキャリアを形成したり自分らしい生き方を模索したりする過程で、「やりたいことが見付からない」などの壁にぶち当たることもしばしばあるのではないでしょうか。アスリートにとってもそれは同じこと。これまで以上に自分らしく生きたいとセカンドキャリアの方向性を模索するも、なかなか理想の生き方が見付からずやきもきした経験がある人も多いはず。
総合格闘家として一時代を築き、Martial Combatライトヘビー級王座、ROAD FC初代ミドル級チャンピオンの座を獲得した大山峻護さんもそのひとり。引退当初に感じた「この先どうしよう」という不安はかなりのものでしたが、ストレスに悩む現代人の多さに着目したことをきっかけに、格闘技を楽しみながらメンタルタフネスやチームビルディング力を鍛えられるプログラムを考案。現在では、企業や学校向けトレーニングを通して多くの人をサポートしています。心と身体の健康に役立つ栄養満載のクジラにも興味津々で、今回は東京・新宿のレストラン『HATSUMOMIJI(ハツモミジ)』にいらしてくださいました。
アスリートの身体づくりに欠かせないイミダペプチドは積極的に摂取したい
――大山さんはクジラを食べるのは初めてと伺いましたので、今回は、クジラの栄養や食文化についても知ってもらいたく、「クジラ食文化を守る会」理事長の谷川尚哉先生と、ノルウェー最大の捕鯨会社、ミクロブストバルプロダクタエーエス社の日本法人「ミクロブストジャパン」代表を務める志水浩彦さんにもお越しいただきました。
志水「大山さんはECサイトでイミダペプチドのサプリメントや飲料を取り扱っていらっしゃいますが、ご自身でもよく摂取していらっしゃるのですか?」
大山「そうですね。体感としても変化を感じられるので、後輩にプレゼントすることも多いです。安いものではないですが、現役時代は藁にもすがる思いで、『少しでも強くなりたい』と積極的に摂取していました」
志水「クジラにもイミダペプチドの一種であるバレニンが豊富に含有されているんですよ。アンセリン、バレニン、カルノシンはすべてイミダペプチドの一種なのですが、クジラと同レベルでバレニンを含有している動物は他にはいないんです」
大山「イミダペプチドの含有量が高いと聞くとそれだけでも興味がありますが、クジラというと高価でなかなか手を出せないイメージがあります」
志水「それは確かにそうなんです。かつての捕鯨量は20万トン以上だったんですけど、現在は2,000トンも獲れていないから、必然的に価格が上がっています」
身体にいい成分を手軽に摂りたいから、バレニンのサプリメントは魅力的
――ではここで早速ですが試食していただきます。今日は、「くじらカレー」(ナンとサラダのセットで780円)「くじら紅白刺し」(1,200円)「くじらオイスターいため」(1,000円)の3品をご用意いただきました。まずはカレーからどうぞ。
大山「おいしい! すごくおいしい! こんなにおいしくて栄養価が高いなら日常的に食べたいです。でもこれ、クジラって言われないと何の肉かわからないですね。もっと独特のクセがあるのかと想像していました」
志水「肉の味って基本的にはその動物が食べているものの味になるから、牛や豚と違ってエサまでコントロールできないクジラも特有のニオイや味ではあるんですけど、昔と違って今は冷凍技術が発達して鮮度が良い状態で流通されるので、クセがかなり少なくなったんですよ」
谷川「コールドチェーンが確立していない時代は、氷詰めされた状態で東京の市場に届いたものが貨物列車で地方まで運ばれる過程で、どんどん質が落ちていました。冷凍の貨物車なんて昔は無かったから、その時代にクジラを食べていた人のなかには、クジラといえば固くて臭いという印象を抱いている人も多いですよ、でもね、当時の日本では、わたしたちのたんぱく源の60%が鯨肉で、日常的なおかずだったんですよ。ところが、国際的なルールで供給量が減ったことで価格が上がったことで、“おかず”から“ごちそう”になってしまった。わたしたち『クジラ食文化を守る会』は、週に一回でも二回でもいいから、当時のように日常的なおかずとしてクジラを楽しんでもらうことを目的に活動を続けています」
大山「日本以外の国では食べられているんですか?」
志水「ノルウェーやアイスランドをはじめ、世界のいろんな国がクジラを食べています。ノルウェーでは、バレニンのサプリメントも人気なんですよ」
大山「それは絶対売れますね! サプリメントだと身体にいい成分を手軽に摂れるから、特にアスリートにとってはうれしいことです。日本でももっと販売してほしいです」
運動で身体を動かして、添加物フリーの身体にいい食材を摂ることはとても大切
――続いては、くじら紅白刺し、くじらオイスターソース炒めをぜひ召し上がってみてください。
志水「クジラの肉は部位によって味や食感が異なるんですけど、尻尾の部分のよく動くところはキレイなサシが入った霜降りでめちゃくちゃ高いんです。つい最近も豊洲市場で1kg 21万円の値段がついたんですよ。そんな高級な肉にはなかなか手が出ないけど、赤身と皮下脂肪を一緒に口に入れることで似た味わいを楽しめるということで、紅白刺しという食べ方が楽しまれているんです」
谷川「まずは赤身だけ、皮下脂肪だけで食べてみると違いがわかりやすいですよ」
大山「赤身おいしい! 肉っぽい!」
志水「クジラって水産物扱いなんですよ。だから魚のように生食が楽しめるけど、食感は肉っぽいっておもしろいですよね」
大山「皮下脂肪と一緒だとまた違ったおいしさです。刺身とお肉を混ぜた感じ。これだけおいしくて栄養価も高いなんて、身体のコンディションを整えるためにも心のコンディションを整えるためにもうってつけですね。僕は企業研修を通して多くの経営者と接してきたことで、心と身体の両方のコンディションが整っていると仕事のコンディションもよくなるんだと認識していますが、クジラを食べることでそのサポートができるように思います」
志水「バレニンは、実証実験の結果、抗疲労効果、ストレス軽減効果も期待される成分であることが報告されているのでまさしくその通りと言えますね」
大山「くじらオイスターソース炒めも本当に日常的に食べたいくらいおいしいから、みんなにもぜひ食べてもらいたいです。ストレス緩和に効果的でスタミナもつくクジラ料理が世の中に浸透することは、精神的な不調を抱えている人を減らすことにもつながりますよね。企業研修で接する社員さんのなかにもストレスを抱えている人はとても多いので、僕もみんなにすすめたいです。それと、日本は大人だけじゃなく子どもの幸福度も世界的に見て低いから、教育の仕方をはじめいろんなことを見直さないといけません。たとえば添加物の多い出来合いの食べ物を食べ続けることもよくない。心と身体って密接にリンクしているから、身体に悪い物を摂っていると心の状態もどんどん落ちていくんです。しかも、そこにさらにコロナや戦争でストレスがかかっている状態であることを考えると、いいものを摂ってしっかり運動して、心と身体を整えていくことがいかに重要であるかがわかるはずです」
クジラに対する正しい情報をみんなにも知ってもらいたい
――大山さんから、クジラについておふたりに聞きたいことはありますか?
大山「どうして世界には捕鯨に反対している人がいるのですか?」
谷川「人間と同じ哺乳類で、知能も高い動物を食べるのは野蛮だという考え方が70年代以降急激に広まったからです。産業革命の時代には、鯨油を機械の潤滑油として利用するために欧米の国々はたくさんクジラを獲り、高く売れる油の採取が終わると用済みの肉は廃棄していました。しかし、石油が採取できるようになったことから状況は一転。欧米での捕鯨産業は衰退していきました。一方、ノルウェーやアイスランド、日本では、油だけでなく骨や肉までありがたくいただいていたため、石油が採れるようになったことが捕鯨産業の衰退にはつながりません。しかし欧米の国々は、食文化としてクジラを食べている国に対しても捕鯨をやめるよう促してきました。その背景にあったのがベトナム戦争です。当時、世界中がベトナムに爆弾を投下したアメリカを批判したことで、国内からの非難の声も強まり、2期目も続投したいと考えていたニクソン大統領の再選が危うくなっていました。そこで、1972年の大統領選を前に、国民の目をベトナム戦争から逸らすために他に非難の対象として、反捕鯨運動が盛んになったんです。ホワイトハウスは、国中の動物愛護団体に莫大なお金をばらまいたと言われています。結果、1972年のストックホルム会議でも、商業捕鯨を10年間禁止とする勧告が採択されることになりました。白人至上主義もあってか、食文化として根付いている、よその国に対してまでクジラ肉を規制するのはおかしな話ですよね。たとえばインドの人たちが他の国の人に“わしらの神様である牛を食べるな”っていうこともないでしょう?」
志水「そうした背景を知らず、資源管理のために捕鯨の頭数を減らさないといけないと思っている人もいますが、そうではないんです。日本は、現在は独自に商業捕鯨していますが、100年捕り続けても頭数が減ることのないよう、きちんとした計算方式に基づいて算出した頭数を守って捕獲しています」
大山「正しい情報が広がっていったらいいですね。僕も微力ながら、クジラを食べることで応援していけたらいいなと思っています」
■大山峻護さん
大山 峻護(おおやま しゅんご)
1974年生まれ 栃木県那須郡出身。
日本の元総合格闘家。K-1やPRIDEで活躍。ヴァンダレイ・シウバやミルコクロコップ、グレイシー一族と闘った初代ROAD FCミドル級王者。
現在は、トレーナーとして、格闘技プログラムの指導や講演など幅広く活躍。