かつて“クジラの市”でにぎわった長崎県東彼杵町に誕生した新名物「くじら焼」とは? | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2022.09.21

かつて“クジラの市”でにぎわった長崎県東彼杵町に誕生した新名物「くじら焼」とは?

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長崎県の中央部、大村湾の東側に位置する東彼杵町(ひがしそのぎちょう)は、かつて捕鯨が盛んだった同県のなかでも、とりわけクジラと縁が深い街のひとつ。江戸初期に大村藩士であった深沢義太夫が、紀州・太地浦(現在の和歌山県太地町)で学んだ鯨捕りを北部九州にも浸透させたいと西海捕鯨を開始した際、交通の要であった東彼杵で“クジラの市”を開いたことがきっかけとなり、クジラとのご縁が紡がれることとなったのです。その後、幕末の資源減少やノルウェー式捕鯨の導入などによって捕鯨産業は衰退しますが、時を経た令和に、かつて町の発展を支えたクジラをフィーチャーした「くじら焼」が誕生。果たしてどのような経緯でこの新名物が誕生することとなったのでしょうか? 一般社団法人『東彼杵ひとこともの公社』の企画マネージャーを務める池田晃三さんにお話を伺いました。

――クジラと関係が深い町・東彼杵の新名物として「くじら焼」が誕生した経緯を教えてください。

池田「くじら焼は、2020年に誕生した東彼杵のブランド『CHANOKO』が開発しました。『CHANOKO』の語源は“お茶の子さいさい”。東彼杵の名産品が『そのぎ茶』というお茶であることから、この町を訪れるみなさまに、ほっこりとしたお茶の時間を楽しんでほしいということで、『そのぎ茶』に合う茶菓子を考案することになった結果、くじら焼が誕生しました。では、『CHANOKO』とは何かというと、九州電力と『東彼杵ひとこともの公社』が手を組み、地域を活性化させて持続性のあるビジネスモデルを構築しようというなかで生まれたブランドです。『東彼杵ひとこともの公社』代表の森は、2017年に弊社を設立した後、この町にクジラからの恵みをもたらした先人の偉業を礼賛して、ヒト・コト・モノが豊かになるブランドを作りたいと、『くじらの髭』というウェブサイトを立ち上げて地域の活性化を図っていたんです。そんななか、九州電力が地域の課題解決を図る『Qでんにぎわい創業プロジェクト』を立ち上げて協業先を募集。その結果、弊社を選んでいただくに至ったという流れです」

――なるほど! “お茶とクジラの町”なんですね。東彼杵のみなさんにとって、クジラは子どものころからなじみ深い存在なのでしょうか?

池田「自分は東彼杵から車で30分ほどの諫早出身なのですが、東彼杵でも諫早でも同様に、クジラは今でもよく食べられている食材です。小中学校のころには給食に出ていましたし、年末年始などの家族が集まるタイミングではみんなでクジラを食べるのが習わしです。“クジラのように太く長く生きられるように”の意味を込めて、お腹の部分の肉や小腸などをお節としていただきます。また、町内にはクジラのカツなどを出す店もありますし、誰にとってもおなじみの存在だと思います」

――では、くじら焼も、地元のみなさんにも親しまれていますか?

池田「そうですね。東彼杵に遊びにきてくださる観光客はもちろん、地元の方々が買っていかれることも多いです。“今日は親戚の家に行くからお土産に”“孫たちがくるからおもてなしに”といくつもまとめ買いしていかれる方もいらっしゃいます。焼き型にもこだわって、レトロで懐かしいデザインにしていることもあって、気に入ってくださる方も多いです」

――中には何が入っているんですか?

池田「季節によって異なるのですが、今の時期ですと、ベーシックな黒あん、白あんのほかに、ポテトサラダに長崎生まれの“金蝶ソース”をかけたポテサラ味を用意しています。5月から6月にかけての新茶が市場に出回るシーズンは抹茶クリーム味が人気です」

――東彼杵での販売拠点である「uminoわ」と「Sorrisoriso(ソリッソリッソ)」以外に、キッチンカーで出張販売もされていますよね。

池田「出張販売でくじら焼を買ってもらうことで、より多くの人に東彼杵のことを知ってもらいたいという思いがあります。そもそも、『Sorrisoriso』開業の経緯からしてそう。弊社の代表の森はもともと町内でコンビニを経営していたのですが、店の経営が成り立たないほど人口が減っている状況をなんとかしたいと、取り壊し寸前だったJAの米倉庫を交流施設としてリノベーションするに至ったんです。さらに2022年には『uminoわ』がオープンしたことで、施設内でのイベント開催希望者も順調に増えつつあります。『Sorrisoriso』がオープンした2015年には、5年間で5店舗を新規オープンさせることが目標だったのに、今では20~30店舗近くが新しく立ち上がっているし、東彼杵への移住者も交流人口も増加しています」

――そのために一役買っているのがクジラという存在でもあるのですね!

「そうですね。全国からの注目度も少しずつ上がりつつあるので、これからますます多くの人に東彼杵に興味を持っていただけたらうれしいなと思っています。現在の出張販売は近郊のみですが、各地で開催されるイベントにもお声がけいただけたらうれしいです。色んな方と出会うきっかけをつくっていくためにも、これからもSNSでの発信などにも力を入れていきたいです」

クジラで栄えた町の歴史、先人たちへのリスペクトの気持ちを大切にしながらも、次から次へと新しいことに挑戦し続けている東彼杵という町への注目度は、今後ますます高まること間違いなし。『くじらの髭』のwebサイトでは、くじら焼のほかにもさまざまな興味深い情報が発信されているので、ぜひ一度のぞいてみてくださいね。

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