日本で初めにホエールウォッチングがおこなわれたのはどこ? 世界遺産にも登録されている自然の宝庫とは? | 耳ヨリくじら情報 | くじらタウン

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2022.04.27

日本で初めにホエールウォッチングがおこなわれたのはどこ? 世界遺産にも登録されている自然の宝庫とは?

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提供:小笠原ホエールウォッチング協会

日本にはホエールウォッチングを楽しめるスポットがいくつかありますが、実は日本で最初にホエールウォッチングがおこなわれたのはたった34年前だとご存知でしょうか?

日本で最初にホエールウォッチングがおこなわれたのは1988年4月のこと。記念すべきその場所は、東京都の小笠原諸島でした。なぜその年、その場所でホエールウォッチングがおこなわれることになったかというと、実は、1968年にアメリカから日本に小笠原が返還されて20周年の節目に、記念事業をおこなおうと画策した結果なのです。

小笠原のクジラに注目が集まる出来事が重なったことで、一念発起してホエールウォッチング事業をスタート

では、なぜクジラだったかというと、小笠原諸島周辺海域には昔からさまざまな種類のクジラやイルカが訪れていたから。 小笠原初の移民となったのは、1830年にこの地に入植したナサニエル・セーボレー氏やその家族らですが、彼らは捕鯨船に水や食料を提供することを生業としていました。

また、1861年にはジョン万次郎が小笠原の開拓調査に参加。1863年には捕鯨のために再度来島したとされています。その後も小笠原での捕鯨は続き、1940年代まではザトウクジラ、1987年まではニタリクジラの捕鯨がおこなわれていました。

また、同年、小笠原のクジラが注目される大きなきっかけとなる出来事が起こりました。水中写真家・望月昭伸氏が小笠原で撮影したザトウクジラの写真が、クジラの保護活動にも力をいれている漫画家・岩本久則氏の目に留まり、みんなで小笠原にクジラを見に行きたいと受け入れの打診があったのです。ちょうどそのころ小笠原では、アメリカからの返還20周年の記念事業を検討中。ホエールウォッチング事業も提案されていたところでした。

一方、アメリカでザトウクジラの生態調査をおこなっていた生物学者は、水中写真家・中村宏治氏が撮影したザトウクジラの写真を目にして、小笠原での調査を熱望。2つの出来事が重なったことがきっかけとなり、1989年、『小笠原ホエールウォッチング協会』が発足することとなりました。

現在、協会 で働く研究員の辻井浩希さんによると、返還20周年記念事業でホエールウォッチングの開催に向けて、ホエールウォッチングの先進地であるハワイに視察に行き、また研究者からザトウクジラの生態に関する知見も得ることで、 自然を守りながらホエールウォッチングをおこなっていくためには何が必要なのかを学び、必要なルールを設けながら事業を展開していったといいます。たとえば、「クジラと船との距離は100m以上を保つこと」もルールのひとつ。クジラにストレスを与えることなく村おこしに活かすにはどうすればいいかを考えていったのだそうです。

ホエールウォッチャー500人からのスタートで、年間3万人が訪れる人気観光地の柱に成長

事業化初年度となる1989年のホエールウォッチャーは約500人。PR不足を実感する結果となったものの、大切な観光資源であるクジラの魅力を最大限に活かすべく、協会はその後もホエールウォッチングの振興と小笠原の発展に寄与。2000年には”エコツーリズムの推進”を会の目的に加え、2005年には『第一回エコツーリズム大賞』優秀賞を受賞した同協会の尽力もあってか、2011年、小笠原諸島は世界自然遺産に登録されます。そこからはさらに観光客も増加し 、近年は年間3万人以上が訪れる人気観光地に。コロナ禍においてはその数は減ってはいるものの、今では若者から高齢者までたくさんの観光客が訪れています。

「クジラやイルカ、ダイビングなどの海ツアーが 目当ての人もいれば、森や山を散策するのが好きな人もいますし、その両方を含めてトータルで小笠原を満喫したいという方もいらっしゃいますね」。 そう話す辻井さんに小笠原の魅力を尋ねたところ、「自然が豊かなのはもちろん、人の好さも大きな魅力です」と回答。「小笠原は移住者が多い島なので、島のことを好きになって移り住んでくる人に対してみんなウェルカムといった感じです。わたし自身、出身は大阪なんですけど、イルカやクジラが大好きで大学では鯨類について学びを深め、卒業後、島に移り住んだのですが、年間通してクジラを間近で見ることができるのは最大の魅力です」。

ホエールウォッチングと併せてドルフィンスイムも楽しめる

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

辻井さんのようにクジラが大好きな人にとって、船上からも陸上からもクジラの躍動感を体感できるのはたまらないことであるに違いありませんが、それだけでなく、小笠原諸島ではイルカと一緒に泳ぐ「ドルフィンスイム」も体験できます。一緒に遊んでくれるのは、沿岸域に生息しているミナミハンドウイルカ。目の前でイルカやクジラを感じられる楽しさが忘れられず、何度もリピートしているファンもとてもたくさんいるのだそうです。

ただしもちろん、クジラたちが訪れる美しい海や自然を守るために、ルールを守って遊ぶことはとても大切。みんなで協力してクジラや自然を守っていけるよう、辻井さんは地元の中学生たちなどにクジラについての授業をおこなうこともあるといいます。

「1日目には、イルカ、クジラがどういう生き物なのか、普段どんな暮らしをしているのか、小笠原ではどういう鯨種を見ることができるのかの講義をおこない、2日目には実際に海に出て調査してもらいます。何頭発見できたか、子どもを連れているクジラがいたかなど、わたしたちの調査・研究と同じことをやってもらうんです。そうすることでクジラをより身近に感じてもらえば、ルールがあることの大切さもわかってもらえると思っています」。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

美しい自然を未来の子どもたちに残すためにも、わたしたち一人ひとりの小さな行動が大切

では、本土に暮らすわたしたちにも何かできることはあるのでしょうか? 辻井さんにその疑問を投げかけたところ、「簡単なことからいうと、川や海にゴミを捨てないことですね。川に捨てたゴミが海に流れ着いて、そのゴミがクジラに与える影響がどれほどのものかまではわかっていないけど、一人ひとりが普段の行動を意識することで、未来の自然を守ることができると信じています」とコメント。小笠原を訪れて圧巻の自然を目の前にしたら、さらにその意識が高まるに違いありません。また訪れたことがない人はぜひ、より多くのクジラが小笠原諸島を訪れるシーズンを狙って、観光計画を立ててみてくださいね。

提供:小笠原ホエールウォッチング協会

ちなみに、子どもの日前後の5月中旬頃までは、小笠原諸島・父島にある『B-しっぷ』(商工観光会館)前で、鯉のぼりならぬ「クジラのぼり」に出逢うことができます。これは、毎年、小笠原ホエールウォッチング協会がザトウクジラのホエールウォッチング期間にあげているものなんだとか。GW明けまでにお出かけの際にはぜひチェックしてみてくださいね!

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