耳ヨリくじら情報
昨年中、東京・港区にて、「クジラの持続的利用調査等事業等に関わる料理人向け研究会」が開催されました。
「研究会」で講師を務めたのは、東京・神田のクジラ料理の名店『くじらのお宿 一乃谷』店主の谷光男さん。毎日忙しいけれど、「クジラ料理が大好き」「自分でもクジラ料理を作ってみたい」という女性たちのために、簡単な調理法をレクチャーしてくれました。
くじらの冷凍赤身肉を購入したら、まずは冷蔵庫で数日かけて解凍しよう
谷さんが最初に説明したのは、赤身肉を購入した場合の解凍および熟成の手順。通販購入ですと、赤身肉は、冷凍されたブロックの状態で届けられるため、購入後は、まずは冷蔵庫で解凍することになります。解凍に要する時間は部位や大きさにもよりますが、おおよそ3日ほど。解凍が終わったら、「熟成」の手順に移ります。
解凍後、「熟成」させるとよりおいしくなる
「熟成」はまず、冷蔵庫から取り出したブロックをカットします。カットすると多少ドリップ(肉汁。赤身は水分が多いため)が出ますが気にしなくてOK!調理一回分として使用しやすい適当な大きさにカットしたら、ナイロン袋やジップロックなどに入れて袋の口をしばります。このとき、中の空気を抜きながらしばるのがポイント。空気を抜くことで、肉の酸化を防ぐことができるからです。
しっかりと空気を抜いて袋をしばったら、さらに1日、冷蔵庫に保管します。「熟成期間」と呼ばれるこの工程こそが、クジラ肉をよりおいしくするコツなのです。
熟成させた肉は再冷凍しても味が落ちない
熟成が終わったら、その日食べる分はすぐに調理しますが、その日食べない分は再冷凍して保管しましょう。熟成させた後は再冷凍しても味が落ちることがないのがうれしいポイント。再冷凍したものを使いたいときは、1日かけて冷蔵庫で解凍すればOKです。
熟成肉はくさみゼロでまろやかな味わい
実は、研究会で用意された肉も、谷さんが事前に熟成させておいたもの。「熟成させれば、くさみゼロでまろやかな味わいになることを確認してほしい」と、まずは参加者たちに刺身で振る舞われました。
「くさみもなにもないですよね?」の谷さんの質問に対して、参加者たちは「全然ない!」と即答。さらに、参加者のひとりであるソルトコーディネーターの青山志穂さんが用意した塩から、“クジラと相性がいい塩”として選んだ西表島の塩をトッピングして口に運んだ面々は、「うまみの輪郭がはっきりしますね」と感動のため息をもらしていました。
鯨の脂身は?
次に、上質な脂身である皮が提供されると、同じく参加者のひとりで出張料理人のマカロン由香さんは「すーっと身体に入っていきますね」、海釣りプロアングラーの三石忍さんは「噛まなくても溶けていく」とそれぞれコメント。「きのこに少しだけ載せて塩をかけていただいたら、脂のうまみとジューシーさが豊かに広がりそう」(マカロンさん)と、レシピアイディアも次々と沸いてくる様子でした。
ユッケもステーキも簡単すぎ!冷凍庫に熟成鯨肉を常備しておけばいろんな料理を楽しめる
続いては、ごま油と醤油、ニンニクで和えたユッケも登場。「鯨肉は色が変わりやすいから、食べる直前に和えるようにしてね。オクラとか納豆とか入れてもおいしいよ」とアドバイスする谷さんは、さらに料理を作り続けます。
手のひらサイズにカットしたブロックに、塩コショウをして軽く両手で揉み込むと、強火で表面を焼き上げた後、容器に取り出し、「この状態でフタをして3時間置き、そのあと、真空で冷凍保存もできるんです。かつおのたたきみたいに万能に使えるから、わさび塩かけたりニンニクのチップをワンポイントで載せたりして楽しんでくださいね」と、ローストした鯨肉のアレンジ方法まで教えてくれました
最後に、クジラのステーキの調理も開始。「クジラ肉を焼くときはバターじゃなくてマーガリンがいい。洋酒やお酒でフランベした後、醤油を回しかけるのが基本です」と話しながら、会場に用意されていた調味料でアレンジしながらおいしく焼き上げてくれました 。
解凍から熟成、再冷凍までの正しい手順を学べるだけでなく、簡単にチャレンジできる調理法まで覚えることができて、参加者一同は満足な表情。マカロンさんに料理を習っているという熊谷訓果さんは、「クジラのすばらしさをわたしもたくさんの人に伝えていきたいです」とコメントしてくれました。
※講習会は2020年11月に開催されたものです。
▶くじらのお宿 一乃谷
仙台で創業以来、東京に移転。クジラ刺しだけでも17種類の部位があり、すべて熟成肉を使用。創業以来30年以上クジラ料理を取り扱う。店主自らが捕鯨調査船から直接買い付けるため、美味しく安全にクジラ料理を楽しむことができる。
住所: 東京都千代田区内神田2丁目7-6 ゆまにビルB1F
Tel: 03-3254-6096