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鯨類およびその他の海産哺乳類の調査および水産資源の持続的な利用に寄与し続けている、指定鯨類科学調査法人/一般財団法人「日本鯨類研究所」所蔵クジラアイテムのご紹介第 5 弾。
今回は、郷土玩具の「鯨車」を中心にご紹介します。
「郷土玩具」とは、日本各地で古来より作られてきた玩具のこと。各地域の信仰に結び付いたものや、その地域になじみのある動物をモデルにしたものが多く存在します。よく知られているのは、北海道の「ニポポ」、東北地方の「鳴子こけし」や「遠刈田こけし」、岐阜県の「さるぼぼ」、福島県の「起き上がり小法師」、同じく福島県の「赤べこ」など。このあたりは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、郷土玩具の中には、動物や鳥を模した胴体にタイヤ型のパーツをつけたタイプも多く存在します。熊本県の「キジ車」などは九州地方では広く知られていますが、クジラにタイヤがついた「鯨車」も各地に存在。高知県や長崎県、和歌山県などで作られてきました。
高知県の鯨車(写真上)発祥の地は、高知県の南東部に位置する室戸市。この街に暮らしていた捕鯨漁師たちが、出漁からの帰途、長らく会っていない妻や子どもたちの土産物として持ち帰っていた自作の玩具です。
土佐(現在の高知県)では、1624年から捕鯨が始まり、約280年間捕鯨がおこなわれていました。当時、土佐の室戸には「津呂組」「浮津組」という 捕鯨組が存在し、鯨捕りたちは、室戸岬沖のみならず足摺岬の窪津などにも出漁していたため、家で待つ家族たちは寂しい思いをしていたに違いありません。
命をかけて海で働くお父さんがようやく帰ってきたときのうれしさは相当なものだったでしょうし、かわいい鯨車まで連れて帰ってきてくれたことで、さらにうれしさが倍増していたことが想像できます。
古式捕鯨に使われた「勢子舟」や「網舟」を再現した郷土玩具もあります。それが、現在では土産物としても人気の「熊野古式くじら舟」。こちらも「鯨車」と同様、もともとは漁師が子どものために作っていたミニチュア玩具ですが、本物と同様に鮮やかな模様が施されているのがすごいところ。
桐や鳳凰が描かれた「勢子舟」の他、担当任務ごとに模様が異なる舟がラインナップされているとのこと。当時の模様とは少し異なるものもあるようですが、全部そろえるのもまた一興ですね。
続いては長崎県の鯨車(写真上)。なんとも愛らしい表情のこちらの鯨車は、長崎名物の「長崎くんち」とも関係があります。長崎最大のイベントである「長崎くんち」に 7 年に 1 度登場するクジラ型の山車「鯨の潮吹き」が、まるで大型版の鯨車なのです。街中を練り歩く大きなクジラの姿、一生に一度は自分の目で見てみたいものですよね!
最後に紹介するのが、紀州(現在の和歌山県)で生まれた鯨車です。捕鯨が栄えた熊野灘沿岸は、クジラに関する文化もさまざまに発展してきたエリア。こうした民芸品を通して、その土地土地の文化を知るのも楽しいものですよね。
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