耳ヨリくじら情報
10月2日、東京・麹町の「ホテルルポール麹町」にて、「母船式捕鯨ニタリクジラ勉強会」が開催されました。
姿かたちがイワシクジラに似ていることから、「ニタリ(似たり)」と名付けられたニタリクジラは、体長14メートルほどのヒゲクジラ。同会を主催する共同船舶株式会社は、2019年7月の商業捕鯨再開後、母船式捕鯨業を担う唯一の捕鯨会社として、主にニタリクジラを捕獲対象として操業しています。
ここ数年、鯨肉は卸価格、供給量ともに減少傾向にある
勉強会冒頭に登壇したのは、同社代表取締役社長の所英樹氏。所氏によると、近年、日本における鯨肉市場の卸価格は800円/kg以下にまで落ち込み、供給量も減少。同社の生産量は年間約1,500tで、ノルウェーやアイスランド沿岸で捕獲したものを含めても、年間3,000t以下にしか満たないのだとか。
こうした現状を打破すべく、「卸価格」「供給量」の両方をアップさせるためには、「マーケティングやプロモーションに力を入れること」「鯨肉の品質を上げること」が必須だと語る所氏。「素人が扱ってもドリップが出ないくらいの品質追究を目指していきたい」と、今後の目標を掲げていました。
捕鯨船からの目視により、クジラの頭数が増加していることを確認
続いてマイクを握ったのは、第二勇新丸船長の阿部敦男氏。昭和56年から捕鯨船に乗り続けているという阿部氏は、ここ数年は、所氏が掲げた目標を実現するに十分なほどクジラの発見頭数が多いと証言。
2018年には、オホーツク海において100頭あまりのナガスクジラを見たといい、「将来におけるたんぱく資源確保の観点からも、共同船舶に存続してほしい」と想いを言葉にしていました。
続いては、三坂商事の古川富蔵氏がマイクを引き継ぎ、アイスランドでのナガスクジラの捕鯨について言及。コロナ禍の影響で2020年には思うように漁ができなかったといい、国内在庫にも限りがある現状を明かしました。
ノルウェー国内でもっとも多くの鯨を捕獲しているのは、ミクロブスト社のKATO号
最後に登壇したのは、ノルウェーの捕鯨会社・ミクロブストジャパンの志水浩彦氏。志水氏によると、日本は、ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラなどを捕鯨対象としているのに対して、ノルウェーが捕獲対象としているのはミンククジラのみ。2020年シーズンは1,278頭の捕獲枠があり、13隻の捕鯨船が稼働したが、そのうちの1隻はミクロブスト社のもの。
1,278頭のうち、結果として503頭をしとめたものの、そのうち138頭を捕獲したのは、ミクロブスト社のKATO号だったと明かしました。これは、国全体の捕獲量の27%にあたり、ノルウェーでもっとも多くの鯨を捕獲した会社ということになるのだとか。
捕獲後は、すぐにクジラを船にあげてデッキで解体。捕鯨をおこなっているのはノルウェー領のスヴァールバル諸島で、かなり気温が低いため、天然の冷蔵庫の中で作業しているような過酷な状況なのだそうです。
捕獲した鯨肉のうち日本向けのものは、すぐに船内で凍結
解体した鯨肉のうち日本に輸出するものは、刺身品質を保つためすぐに凍らせて鮮度を管理します。これは、凍結させることによって菌の増殖を防ぐことができるためですが、ノルウェーの捕鯨船の中で船内凍結ができる船はKATO号だけとのこと。
また、日本輸出向けに凍らせる部位以外は、氷の中に埋めた状態でスカンジナビア半島本土まで運び、生肉として販売したり、サプリメントやペットフードの原料として使用したりします。ノルウェーでも、鯨肉は余すことなく使われているのですね。さらに、捕獲したすべてのクジラは、水銀やPCB、残留農薬、生菌検査などを通してノルウェー国内でDNA登録するため、日本に入ってくる鯨肉も安全性が保たれているのだとか。
最後に、「共同船舶や三坂商事はライバルでもありますが、一緒にクジラ業界を盛り上げていきたいです」と志水氏は笑顔で語ってくれました。
鯨肉試食やくじらソングのパフォーマンスも
勉強会の後は、シンガーソングライターの福島清香さんが「くじらのマーチ」、牧野公美さんが「くじらのワルツ」を披露。クジラ料理屋『くじらのお宿 一乃谷』の料理人が手掛けた「クジラのロースト」「クジラのすじ煮込み」「さえずりのやわらか煮」などのおいしい鯨肉メニューを楽しむ参加者の顔がほころぶひとときとなりました。
■共同船舶株式会社
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