耳ヨリくじら情報
10月18日、東京海洋大学楽水会館にて、「全国鯨フォーラム2019in東京」が開催されました。「全国鯨フォーラム」とは、「捕鯨を守る全国自治体連絡協議会」で、過去には石巻市や長崎県東彼杵町などで開催。捕鯨や鯨食文化の継承について、有識者らが発表をおこなっています。
最初に登壇したのは、水産庁資源管理部参事官の諸貫秀樹氏。「商業捕鯨再開後の捕鯨業の展開について」をテーマに、2019年7月に商業捕鯨再開に至るまでの背景と、再開後の対策について説明をされました。
水産庁によると、捕鯨再開前の数年間は、IWC(国際捕鯨取締条約)に加盟する捕鯨反対国からの弾圧が激しく、議論さえ難しい状態にあったといい、2018年、日本はIWC脱退を表明。しかしその後も、捕鯨に対する基本的な考え方はIWCが開発・採択した科学的算出方法に基づいて実施しています。また、令和2年度の捕鯨対策予算としては51億円を用意。捕鯨そのものだけでなく、調査などにも費用を充てているとのことでした。
その結果、再開後の捕鯨は極めて順調な滑り出し。7月1日に下関を出港した捕鯨船は、ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭、ミンククジラ11頭を捕獲。今後はより多くの飲食店等がクジラを取り扱うことになりそうです。
続いて、和歌山県太地町・太地町歴史資料室学芸員の櫻井敬人氏より「クジラ沈マスマジキ:捕鯨第一の心掛け」をテーマに日本の捕鯨の歴史についての解説がありました。さらに、山口県下関市の下関教育委員会教育部文化財保護課主幹・岸本充弘氏が「山口県における近代捕鯨の誕生と発展―現代につながる足跡を辿る―」をテーマに持論を展開されました。
その後、開催されたパネルディスッションには、捕鯨を守る全国自治体連絡協議会の中から、和歌山県庁、釧路市、石巻市、太地町の職員が参加。一橋大学大学院教授の赤嶺淳氏がコーディネーターを務め、「鯨を中心としたまちづくり」について自治体が意見交換を行いました。
講演やパネルディスカッションで登壇した市町村は、いずれも鯨猟と関わりが深い自治体ばかり。住民だけではなく訪れる方々にもその歴史を発信していくことで、鯨文化を継承して、未来に受け継いでいきたいとの想いに溢れていました。
パネルディスカッション終了後には、下関市の前田晋太郎市長が発起人となり、「日本遺産発起」が宣言されました。これは、クジラや捕鯨を巡る文化に関して、文化庁の日本遺産認定を目指すことを意味しています。内容を精査すると同時に、下関市と連携する自治体についても考慮した上で、2019年度中に文化庁に申請。前田市長は2020年の認定を目指すと言い、「下関は、来年の全国鯨フォーラム開催地にも決定している。開催日までに認定されることを目標にしたい」と意気込みを語りました。
クジラや捕鯨に関しては、和歌山県・熊野灘の捕鯨文化に関するストーリー「鯨とともに生きる」が既に日本遺産に認定済。それに続く快挙が期待できそうです。