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小学校低学年のころからクジラが大好きで、クジラの生態のみならず、クジラにまつわる文化や歴史についても自発的に研究を続けているという、現在、小学4年生のかえでちゃん。食としてのクジラにも興味津々だという彼女に、『くじらタウン』の料理企画で、小学生でも簡単に作れるクジラ料理を教えてくれた、ローカーボ料理研究家の藤本なおよさんと一緒に、クジラについて、食べることについてお話を伺っていきます。

クジラに関するわたしの自由研究を見た栄養士の先生が、給食にクジラを出してくれたことも!
――かえでちゃんは、『くじらタウン』の料理企画で藤本さんと一緒にお料理を楽しんでくれましたが、これまで、自宅以外でクジラを食べたことはありましたか?
かえで「和田浦のレストランでクジラカツを食べたことがあって、すごくおいしかったです。和田浦で捕れるツチクジラはかなり深いところまで潜るから筋肉質で硬いので、カツや竜田揚げで食べるとおいしいんです。それと、わたしは小学2年生から毎年クジラに関する自由研究を発表しているのですが、研究をまとめたノートを学校に提出した後に、給食でクジラが出たことがあります。栄養士の先生に聞いたら、わたしの自由研究を見て、給食にクジラを出すことを思いついたと言っていました。でも、最近はクジラを売っている業者が少ないから給食に出すのが難しいと言っていたので、『共同船舶』のことを教えました」

3年目の自由研究では念願だった太地町を視察
――小学生で、『共同船舶』がクジラを捕っていることを知っているなんてすごいですね。そもそも、そこまでクジラに詳しくなったのはなぜですか? かえで「小学2年生のときに『鴨川シーワールド』でシャチを見てから、シャチとかクジラが大好きになりました。最初は、“こんな白黒のおっきい生き物いるの?”と驚きました。迫力があるし、“シャチってどんな生き物なんだろう?”と思ってどんどん興味がわいて調べていたところ、ちょうど『千葉県立中央博物館』でクジラの特別展が開催されていることを知りました。そこにいた研究者の先生に話を聞いていたら、“千葉県でも捕鯨しているんだよ”と聞いて、“捕鯨ってなに?”と調べたいことがどんどん増えていきました。4年生の自由研究は、おかあさんにお願いして和歌山県の太地町に連れて行ってもらって、クジラと一緒に泳いだり、『太地町立くじらの博物館』の副館長の先生にお話を聞いたり、クジラのえさやりをやらせてもらったりしました。将来はクジラの研究者になりたいので、まだまだ知りたいことや行きたいところがたくさんあります」

アンケート調査の結果、地域によってクジラに対するイメージが違うことがわかった
――かえでちゃんの研究を見たまわりのお友だちや先生の反応を教えてください。
かえで「みんなすごく反応してくれました。クジラのお肉には疲労回復効果もあるので、そのことについても調べてレポートしたのですが、“クジラを食べるなんてかわいそう”“クジラを食べなくても豚とか牛を食べればいいじゃん”という声も多かったです。4年生のときの研究では、地域ごとの小学生にクジラに対するイメージを聞いたんですけど、太地町では、【かわいい】【大きい】【かしこい】【お刺身や竜田揚げなどの食べ物】という選択肢から、【食べ物】を選んだ子が多かったので、わたしが住んでいる地域とはだいぶ差があるなと思いました。副館長の先生にお話を聞いたところ、実際に太地の人たちの中には、水族館でクジラを見たときに、“おいしそう”と感じる人もいると言っていました。太地は古式捕鯨発祥の場所で、太地の人たちが古くから大切に守ってきた文化だと思うので、わたしもたくさん勉強して日本の文化を守っていける研究者になりたいです」

下関で関鯨丸を見る夢も叶えたい
――太地以外にも行ってみたいところはありますか?
かえで「下関に行ってみたいです。あと、八戸、網走、釧路も。ホエールウォッチングなら知床とか小笠原、土佐湾かな。下関に行くなら、母船式の捕鯨に使われている関鯨丸が捕鯨から戻ってきているタイミングがいいです。関鯨丸を生で見たい気持ちはずっとあります」
藤本「小学生のうちからそんなにクジラに詳しいなんてすごい! わたしも知らないことだらけです」

小さいころから料理が好きで、母親の手伝いも家庭科の授業も楽しかった
――藤本さんは小学生のときはどんなお子さんだったのですか?
藤本「小さいころから料理が好きだったので、小学生時代も母の手伝いをしていました。料理するって楽しいな、という感覚があったので、家庭科の授業も好きでしたね。だけど当時は、料理を仕事にしたいという考えには至らず、大学卒業後は会社員として就職しました」

毎日食べるものは心身の健康状態に直結する
――そこから料理の道に進まれることになったのはなぜですか?
藤本「もともと幼少期から身体が弱く、アトピーや花粉症などの不調にも悩まされていました。さらに、会社員時代には激務だったこともあり、メンタルがボロボロになってしまったのですが、食べるものを変えたことで心身ともに回復していったんです。どんなものを摂取したら体調も肌ももっといい状態になるんだろう? とあらゆる食事法を試してみた中で、低糖質のすばらしさに気づいたことで、ローカーボ料理研究家としての道がひらけてきました」
鉄分、ビタミンB群豊富で高タンパクなクジラは美容と健康維持に最適
――企業のメニュー開発やレシピ本出版など、多岐にわたって活動なさっていますが、クジラを料理することもありますか?
藤本「そうですね。どこにでも売っているわけではないので頻度は高くないですけど、料理することはあります。クジラを生のまま楽しめるメニューにすることが多いですが、竜田揚げなどの定番のものも作りますよ。クジラは鉄分が豊富で女性の体調管理には最適ですし、ビタミンB群が含まれていて美肌効果も高く、高タンパクなので美容と健康にもってこいの食材です」

クジラを売っているスーパーの店員や魚屋さんに、クジラについて質問することも
―かえでちゃんはおうちでもクジラ料理を食べることがあるそうですが、どんなところでクジラのお肉を買っているのですか?
かえで「家の近くのスーパーで何回か買いました。クジラの食文化についても自由研究していたので、お店の人に“なんでこのスーパーではクジラのお肉を売ってるんですか?”と質問したこともあります。お店の人の話だと、クジラはニーズが高いそうで、よく売れると言っていました。ぜひ近くのスーパーでクジラのお肉を探してみてほしいです。それと、千葉の浦安市にある『泉銀』っていう魚屋さんもおすすめです。Eテレの『ギョギョっと★サカナスター』という番組にもときどき出ている魚屋さんで、クジラも魚も鮮度がよくて全部おいしいです。釣竿さんには、“一番おいしい部位は尾身だよ。おいしいけど高いんだけどね”と教えてもらいました。食べてみたらほんとにおいしかったです。尾身と赤身はおいしいと思います。皮はちょっと硬くて、おいしいけど嚙み切れない」
クジラを食べるといいことがいっぱい。おいしいし栄養豊富だし、食べると元気になれる
――お店の人との会話も弾みますね!
かえで「スーパーでは、自由研究のためにクジラの種類も聞いたんですけど、ニタリとミンクがよく入ってくると言っていました。多いのはニタリだそうです。ニタリとミンクはどっちもおいしいから好き。ミンクはやっぱりお刺身が一番で、生姜と合わせるとおいしいです。『泉銀』でも『岩下の新生姜』が売られていて、釣竿さんが一緒に食べるとおいしいことを教えてくれました。刻んだ新生姜がオリーブオイルに漬け込まれている商品です。それを、クジラのお肉にのせて一緒に食べるとおいしいんです」

藤本「クジラ系YouTuberとかやってほしい!」
かえで「みんなに伝えたいことはいっぱいあります。一番伝えたいのは、自由研究を発表したときにも、“クジラを食べるのはかわいそう”“豚とか牛とか食べればいいじゃん”ってたくさん言われたけど、クジラを食べることは縄文時代からある日本の文化だし、栄養もたくさん入っているし、おいしいし、食べると元気になれるということです。ほかにもうれしいことがいっぱいだから、みんなにも食べ続けてもらいたいです」

クジラを食べると、心身の健康に一番重要な栄養素をしっかりチャージできる
――藤本さんからも、みなさんに伝えたいことを聞かせてください。
藤本「今の時代、タンパク質が不足している人がすごく多いので、クジラや魚、肉でしっかりタンパク質を摂取していただきたいなと思っています。タンパク質が不足すると、甘いものを食べてしまったり体調不良になったり、筋肉や代謝が落ちたりとよくないことだらけなので、毎回の食事でしっかりタンパク質を摂ることが大切です。朝はパン、昼はパスタという食生活だと、タンパク質は不足しているし糖質は摂りすぎになっているので注意が必要です。理想は、毎食、手のひら一枚分のタンパク質を摂ること。そうすると、筋肉がついて免疫力が上がるから、体調もメンタルも整ってきます。タンパク質は英語で“プロテイン(protein)”といいますが、プロテインの語源はギリシャ語の“プロティオス(proteios)”で、“一番大切なもの”を意味するそうです。心身の健康のために一番重要な栄養素であることを忘れずに、クジラをはじめとするさまざまな食材から、しっかりタンパク質を摂ることを心がけてくださいね」

■藤本なおよさん
藤本なおよ(ふじもとなおよ)
ローカーボ料理研究家/フードコーディネーター
「ローカーボ(糖質制限)」という食事で体質改善をしたことをきっかけにローカーボに特化した料理研究家に転身。企業や飲食店のレシピ開発、食や健康などに関するセミナー講師や執筆活動、プロモーションやイベント企画などを開催。「ダイエットグルメフェス」の実行委員長としても活躍。
2019年よりYoutubeチャンネル「なおよキッチン」にて動画での糖質オフレシピを配信中。
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