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【新春特別企画】「小さいころから好き嫌いなくなんでも食べてきたから、初めてのクジラもおいしくいただけた」箱根駅伝 三代目山の神・神野大地選手×公認スポーツ栄養士・新生暁子さんスペシャル対談
正月恒例の箱根駅伝は、毎年楽しみにしている人がたくさん。子どものころ、親戚が集まる場でみんなと一緒にテレビの前で応援した記憶がある人も多いのでは? 時代ごとのスター選手の現在の活躍を見ると、懐かしい記憶が蘇ることもあるはず。そこで今回、『くじらタウン』では新春特別企画として、2015年開催の第91回箱根駅伝で往路・第5区の山登り区間において区間新記録(当時)を打ち立てて、「三代目山の神」と呼ばれるようになった神野大地選手をお迎え。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士・新生暁子さん考案の駅伝めし「ハッシュドクジラ」「クジラとキノコの餡かけ」を召し上がりながら、おふたりで対談していただきます。
クジラの赤肉はアミノ酸も鉄分も豊富
新生「神野さんはクジラって食べたことありますか?」
神野「一回もないか、あったとしても記憶にないくらいです」
新生「どういうイメージですか?」
神野「良質な肉なのかな というなんとなくのイメージはありますけど、味や食感はわからないですね」
新生「クジラって“捨てるところがない”と言われていて、骨や歯は工芸品の材料などに使われているし、肉や皮、内臓はいろんな料理に使われているんですよ。見た目が牛肉に近い赤身もあれば、ベーコンとして食べられる部位もあるし、“さえずり”って呼ばれている舌は、関西ではおでんによく入っている高級食材です。“オバケ”って呼ばれている尾っぽの部分はまた全然違う食感だし、いろんな部位を食べてみてほしいんだけど、今日はアミノ酸も鉄分も豊富な赤肉を使った料理を作りました」
低カロリー・低脂質・高タンパクのクジラ肉はアスリートにぴったり
神野「うれしいです! ランナーにとって鉄はすごく大事ですから」
新生「低カロリーで脂質も低く、タンパク質の含有量が高いから、まさにアスリート向けなんです。しかも、細胞のターンオーバーを助けてくれる亜鉛も豊富で、髪や爪のツヤをキープするのにも役立ちます」
神野「いいことしかないですね!」
新生「バレニンっていう、持久力UPに役立つ栄養素も豊富だから、スタミナが必要なスポーツ選手には本当におすすめです」
神野「そんなに優秀な食材ならみんなも積極的に食べたいんじゃないかなと思いますけど、一般家庭でも食べられることがあるものなんですか?」
新生「私たちが子どものころは給食の定番でしたけど、その後、調査捕鯨の時代に突入して以降、普段の食卓に上ることはなくなったんですよね。でも、今は商業捕鯨が再開したから、鯨肉を扱うスーパーも増えているみたい」
臭みが感じられずやわらかな食感の赤肉はまるで牛肉みたい
新生「近所のスーパーでクジラが手に入る人やみんなにチャレンジしてもらえるよう、今日は短時間でサッと作れる料理を用意しました。まずは、クジラ赤肉とフレッシュなトマトをたっぷり使ったハッシュドクジラを食べてみてください」
神野「想像していたような“クジラ感”がまったくないです。牛肉みたい。海の生き物だからもう少し臭みがあるのかと思っていたけど、全然臭みがなくてびっくりです。しかも、食感はもっと硬いのかと想像していたけど、全然そんなことなくてやわらかい! いい意味で予想を裏切られました」
クジラの餡かけは卵焼きとも相性抜群! 白いごはんがもっとほしくなる
新生「こっちは、クジラとキノコの餡かけです。タケノコ入りの卵焼きに、クジラの赤肉とキノコが入った餡かけをのせています」
神野「卵焼きがまずめっちゃうまいし、クジラの餡ともすごくマッチしてます! 僕、白米が大好きなんですけど、これだけでごはんめちゃいけます(笑)実は僕、今日ここに来るまでは、クジラがあまりおいしくなくても“おいしいです”って言わなきゃだよなあ……って思っていたんですけど、今、心の底からの“おいしい”が出てます。真似して作ってみたいですけど、下ごしらえとか大変なんですか?」
新生「餡かけのほうは下ごしらえしていますが、絶対に下ごしらえしないといけないってことはなくて、”下ごしらえするとよりおいしくなるよ“という程度のことですね。ハッシュドクジラに関しては、赤肉に塩と胡椒と酒を少しかけるだけで下ごしらえが完了するので簡単ですよ」
クジラでパスタを作るなら、ミートソース、ラザニアがイチオシ
神野「これとご飯とみそ汁があればしっかり栄養も摂れるし、言うことないですね。僕は、おかずはほどよい量にして、ごはんでエネルギーをしっかり摂るのが好きなので、ごはんに合うおかずが本当に好きなんですよ。でも、パスタとかの麺系もいいな。ちなみにクジラってパスタにも合いますか?」
新生「ミートソースいけると思います! あとラザニアとか」
神野「ラザニア! 僕、チーズ好きなんでラザニアとかドリアとか大好きなんです。クジラのラザニアいいな」
新生「生クリームも意外と合うと思います。和風でもいいし、紫蘇とも相性がいいだろうし、いろんなレシピが浮かんできます」
食事の栄養バランスを考えるのが大事なのと同様、便を確認することも大事
新生「神野さんは、普段の食事に関して気を付けていることはありますか?」
神野「毎回の食事をバランスよく整えるのは大変なんで、朝・昼・晩のトータルでバランスよく摂ることを心がけています。あとは、僕は痩せやすい体質なので、そのときどきの体調や練習量に合わせてご飯の量を変えるなどして調整するようにしています」
新生「収支のバランスが大事ですよね。消費量に対して摂取量が多かったら太るし、足りなかったら痩せるんだから、自分のコンディションを確認しながら調整するって誰にとっても大事。自分で自分のモニタリングができていないと、太ったり痩せたりしやすくて当然です」
神野「僕は便の確認も絶対します。便を見たら、脂っこいものが多すぎたな、ちょっと食べすぎだな、とかもよくわかります」
新生「出る・出ないもだし、形状や色を確認することも大事ですよね。たとえば消化吸収されずに排泄されてしまった食材があるなら、しっかり噛めていないことも考えられるし、便からわかることはすごく多いから、確認しないのは本当にもったいないことだと私も思います」
神野「ですよね! 僕はいい便が出ると気持ちがあがります」
新生「みんな便を確認したほうがいいですよね」
神野「本当にそう思います」
小さいころからいろんな食材を食べさせてくれた両親に感謝している
神野「自分をモニタリングできていると、合う食材・合わない食材もなんとなく分かってくると思うんですけど、僕は両親が栄養を考えた食事を作ってくれていたし、小さいころから好き嫌いなくなんでも食べていたので、200項目以上の遅延型食物アレルギー検査でも、アレルギーがほぼゼロという結果でした」
新生「子どものころから好き嫌いなく食べることはすごく大切ですよね」
神野「でも最近は、食べたくないものは食べなくていいよっていう風潮にあるから、学校の先生なんかも大変ですよね」
新生「親だって、子どもが機嫌を損ねるとイヤだから、“食べなくてもいいよ”で済ませることもあるし」
神野「食わず嫌いなまま大人になることも多いですよね。自分はそういうことはなく、出されたものはなんでも食べることができるし、今日もクジラをおいしくいただけたので、親にはすごく感謝しています」
今年の箱根駅伝は、2年連続三冠達成がかかった駒沢が注目されている
――せっかく新春企画ということなんで、神野さんが思う、今年の箱根駅伝の見どころも教えてください
神野「出雲、全日本、箱根の大学3大駅伝で2022年度の三冠を達成した駒澤大学には注目しています。しかも、2023年度の出雲、全日本も駒沢が1位なので、今回、箱根で優勝したら2年連続三冠ということになりますが、これを達成したらすごい偉業なので、多くの人が注目して見守っています。それと、近年は、大学生が日本トップのレベルになり実業団との差がなくなっているので、選手たちの走りのスピード感にも注目してほしいです。前方から見ると楽に走っているように見えますが、沿道で並走しようとしている小学生やママチャリが映ったら、その瞬間に、“こんなに速く走ってるんだ!”ってわかると思いますし、来年以降でも、機会があればぜひ直接沿道で応援してみてほしいです」
――神野さんの今後のご活躍を応援している人もたくさんいますので、最後に今後の抱負を聞かせてください
神野「マラソンでももっともっと速いタイムで完走したいという目標があるので、これからもプロとして結果にこだわっていきたいです。今日は、バレニンが持久力UPに効果を発揮してくれるといういい情報も得られたし、食事面にも気を配りながらしっかり体調管理していきます」
ご紹介した、「ハッシュドクジラ」「クジラとキノコの餡かけ」は明日1月2日(火)にレシピを掲載予定です。高タンパク低カロリー低脂質の簡単で美味しく栄養満点のアスリートにピッタリのクジラレシピとなっています。こちらも是非お試しください!
▶神野大地さん
神野 大地(かみの だいち)
Webサイト:https://kaminodaichi.com/
プロマラソンランナー
1993年愛知県津島市生まれ。中学校入学と同時に本格的に陸上を始め、中京大中京高校から青山学院大学に進学。大学3年生の時に箱根駅伝往路5区で区間新記録を樹立し、「三代目山の神」と呼ばれる。大学卒業後は実業団のコニカミノルタに進んだのち、2018年にプロに転向。2019年アジア選手権マラソン優勝等の成績を残す。現在もワールドマラソンメジャーズや世界大会での活躍を目指して日々トレーニングに励んでいる。マラソンの自己ベストは2時間9分34秒。
2022年にランニングクラブ「RETO RUNNING CLUB」を立ち上げ、市民ランナーの指導もおこなっている。
▶新生暁子さん
新生暁子(しんじょう ときこ)
Webサイト:https://tokikoshinjo.com
管理栄養士・博士(スポーツ栄養科学)、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士
短大・大学(編入)を経て、管理栄養士の免許を取得。2008年 シドニーオリンピック金メダリスト高橋尚子率いる『チームQ』にて栄養・調理担当としてチームに加わり、日本・米国での合宿に帯同し、高橋さんをはじめとする4名の食事全般をサポート。後にフリーの管理栄養士として女優さんや様々なアスリート選手をサポート。現在は、2019年より Jリーグ 横浜F・マリノスの栄養アドバイザーを務めている。
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