聞く
子ども時代の“おいしい記憶”は、大人になってからも色あせることがないものです。たとえ、いつどこで食べたかの記憶が曖昧であっても、ふとしたときに「久しぶりにあの味を楽しみたいな」と思った経験がある人は多いはず。元プロボクサーの内藤大助さんにとっては、なんとクジラもそのひとつ。しかも、学生時代から調理のアルバイトで培った腕を活かして、自分で鯨肉を使った簡単な料理を作ることもあるのだとか。そこで今回、都内のキッチンスタジオへ内藤さんと、『くじらタウン』ではおなじみのクジラ料理専門店『らじっく』板花貴豊さんのお二人をお招きし、各自のレシピで料理していただきつつ、完成後にはクジラ料理を楽しんでいただきました。
クジラ缶詰を具材にした炊き込みご飯は、下積み時代から作っていた
――今日は内藤さんにお料理を作っていただけるとのことで、スタッフ一同楽しみにしておりました!
内藤「たいした料理じゃないですけどね(笑)でも、食材の量も目分量でOKのレシピなので、真似して作っていただけると思います。今日作るのは炊き込みご飯とホットサンドなんですけど、どちらも大和煮の缶詰があれば十分おいしくできます。クジラの炊き込みご飯を初めて作ったのは、上京したての二十歳頃です。僕は高校を卒業したら地元・北海道で調理師として就職することが決まっていたんですけど、入社式直前に先輩を怒らせたことで採用が見送られてしまい、単身東京に出ることになって、働きながらボクサーを目指し始めたんです。当時は外食するお金なんてなかったから毎日自炊。スーパーの値下げ品をおかずに、米だけは自分で炊いて食べていたんですけど、時々缶詰もまるごと一緒に炊き込んでいました。他に具材を入れることもなかったんですけど、今日はちゃんとすりおろした生姜やしめじも入れますし、味醂とお醤油で味を調えます」
キャンピングカーでの料理に役立つホットサンドメーカーなら、クジラのホットサンドも簡単に作れる
――お米の研ぎかたも丁寧で、普段から料理されていることがよくわかります。
内藤「料理するのは好きで毎日のようになにか一品は作っていますが、奥さんも喜んでくれていますよ。最近はまっているのはガス火専用のホットサンドメーカー。僕、キャンプが好きなんですけど、キャンピングカーでも、これひとつあればなんでも作れるんですよ。カツレツもアサリの酒蒸しも作ったし、本当に使い勝手がいいです。今日はいつも使っているホットサンドメーカーを持ってきたんですけど、一人分のホットサンドを作るときは、小さいほうの『ホットサンドソロ』が使いやすいのでおすすめです。クジラのホットサンドは、食パンに千切りのキャベツと大和煮、そしてマヨネーズを挟んで焼くだけ。ほとんど包丁も使わないし簡単でしょ?」
おばあちゃんとの二人暮らしの食卓にもクジラがよく登場していた
――確かにこれはいいですね! しかも缶詰でできるなんて便利! ところで内藤さんはいつからクジラが好きなんですか?
内藤「子どものころ、おばあちゃんがよく食卓にクジラ肉を出してくれてたんですよ。僕、母子家庭で育ったんですけど、母親が仕事で忙しかったこともあって、小学校低学年のころに、自宅に隣接しているおばあちゃん家に預けられることになったんです。以来、ご飯を食べるのも寝るのもおばあちゃんと一緒。おばあちゃんはいろんな料理を作ってくれましたが、そのなかで好きだったメニューのひとつがクジラです。当時はボクサーを目指していたわけでもないから、栄養のことなんか考えもしなかったけど、後に身体づくりのためにも食材の栄養面を意識するようになると、さらにクジラに惹かれるようになりました。まさにアスリートにうってつけの食材だとわかったからです」
瞬発力を司るカルノシン豊富なクジラはアスリートにうってつけ
――どういうところがアスリート向けだと思われましたか?
内藤「高たんぱく低カロリーなことはもちろん、カルノシンが含まれているところです。今日のために改めて自分でも勉強してきたんですけど、カルノシンって馬の筋肉にもたくさん存在する成分で、馬が一瞬で駆けだせる瞬発力があるのはカルノシンのおかげらしいんです。つまり、瞬発力が求められるボクシングには特にぴったりの食材ということですよね。しかも、DHAも豊富に含有しているし、最近の研究では、老化防止への効果が期待できることもわかってきたそうです。知れば知るほど最強の食べ物じゃないですか!」
未来を担う子どもたちにも後輩アスリートたちにもクジラ料理を楽しんでほしい
――楽しんで勉強してくださっているようでなによりです。さらに今日は、板花さんに「クジラのたたき」「クジララーメン」「クジラステーキ」もご用意いただいたので、いろんなクジラレシピにも触れてもらえたらうれしいです。
板花「今日ご用意させていただいたもののなかで自宅で簡単に再現できるのはクジラステーキです。普段、店では自家製ステーキソースを作ってるんですけど、内藤さんにぜひご自宅でも作ってみてほしいので、今日は簡単に作れるレシピでご用意させていただきますね。ソースの材料として使うのは市販の焼肉のタレと玉ねぎのみです。クジラの赤身の両面に塩コショウして軽く火を通したら、すりおろした玉ねぎを投入した焼肉のタレをフライパンに流し込み、さっと加熱したら完成です。玉ねぎはクジラの臭みを消してくれるので、あるとないとではだいぶ違うので、ぜひ試してみてくださいね」
内藤「ステーキめちゃくちゃおいしいですね! これ、『クジラです』って言われないとクジラだとは気づかないです。一般的な牛の赤身肉よりやわらかいし、食感もいい! 一般家庭でも簡単に作れそうなところもいいですね。僕も家でチャレンジしてみたいです。そして、たたきもラーメンも本当においしい。こんなにいろんなクジラ料理を食べたのは初めてです。まさにクジラのフルコースですよね」
板花「喜んでいただけてうれしいです。内藤さんの炊き込みご飯とホットサンドもすごくおいしいです。子どもと一緒に楽しみながら料理するメニューとしてもぴったりですよね」
内藤「本当にその通りですね。栄養価が高いクジラは子どもにもアスリートにもすすめたいです。僕も現役のときからもっと食べてたかった~……っていう悔しい気持ちもありつつも、これから活躍する後輩アスリートたちにもクジラを積極的にすすめていきたいです」
■内藤大助さん
内藤大助(ないとう だいすけ)
1974年8月30日生まれ。北海道虻田郡豊浦町出身。
日本の元プロボクサー。元WBC世界フライ級王者。19歳でボクシングを始める。96年10月プロデビュー。宮田ジムに所属していた。ニックネーム“最短男”としてファンに親しまれ、一躍時の人となった。
2011年11月に現役を引退し、現在はタレントとして活躍中。