耳ヨリくじら情報
11月2日(土)に“古式捕鯨発祥の地”として知られる和歌山県太地町で、『全国鯨フォーラム2024in太地』が開催されました。
この『全国鯨フォーラム』は2007年より捕鯨を守る日本各地の自治体連絡協議会に加盟する自治体が主催者となり、日本各地の捕鯨文化の継承・普及啓発に重点をおいたフォーラムです。2022年2023年はコロナ渦の影響で中止となったため、3年ぶりの開催となり北海道から沖縄まで全国各地の関係者の方々が集まりました。
「クジラ文化や鯨食文化をどのように次世代につなげていくか」話していきたい
捕鯨を守る全国自治体連絡協議会会長の三軒一高さんの開会宣言から始まり、今年 太地の国際鯨類施設に事務所を構えた共催の(一財)日本鯨類研究所の理事長の藤瀬良弘さんより「“全国鯨フォーラム”が3年ぶりに捕鯨の町太地で開催されることを嬉しく思います。フォーラムでは色々な方々からこれからのクジラ文化や鯨食文化をどのように次世代につなげていくかについてのお話を聞き、今後の取り組みに生かしていきたいと思います」と意気込みを表明しました。
クジラの学術研究都市としての発展と「クジラと海のエコミュージアム太地」構想
基調講演では最初に太地町職員主査の和田正希さんより、「鯨の町太地の30年構想について」をテーマにした今後の可能性について解説がありました。
「太地町は、過去・現在・未来永劫に“クジラと生きる町”その時代ごとのクジラと人との関わり方について考えた町づくりを進めていきたい。過去(1606年)古式捕鯨を行っていた頃は“鯨一頭七浦潤す”といわれ捕鯨業で町が潤っていた。現在(昭和40年~)は“くじら浜公園”がつくられ、公園内にはクジラの博物館ができて、多い時には48万人もの観光客が訪れていました。未来は町全体が“クジラの学術研究都市”になるように目指していきたい」と語り、「『くじらと海のエコミュージアム太地』をコンセプトに掲げ、クジラと魚に出会える町、海と緑につつまれる町、誰もがあたたかく迎えられる町の3つのテーマのもと計画をすすめています。」と、森浦湾のクジラと海を基地とした、活力ある自然とクジラの町づくりの将来構想について示しました。
命あるものをいただいているので感謝して美味しくいただく文化。先代から続く捕鯨をやめるわけにはいかない。
次に登壇したのは太地町漁業協同組合専務理事で日本小型捕鯨協会会長の貝良文さんより「太地の捕鯨と食文化の現状について」をテーマに現在の捕鯨や鯨食についての講演がありました。
太地の古式捕鯨から現在の追込網漁業の方法について説明し現在どのような漁を行っているかの解説がありました。食文化については「漁協が運営する道の駅『たいじ』では、今までは一番人気はマグロ丼でしたが、去年からクジラの竜田揚げ定食が一番人気になりました。また実際にお店に来た女子大生がイルカの刺身を食べてみて“おいしい”と言ってくれたり、海外の方も大勢食べてくれていたりなどクジラ料理を選んで食べる方が増えました」という話がありました。最後には「太地にはクジラ供養祭があり、命あるものをいただいているので感謝して美味しくいただく文化。先代から続く捕鯨をやめるわけにはいかないのでご協力いただきたい。」と日本のクジラ文化について語りました。
太地町はクジラの関係者だけでなく町全体にいきわたる仕組みができている
パネルディスカッションでは、(一財)日本鯨類研究所顧問の加藤秀弘さんがコーディネーターを務め、パネリストとして農林水産省顧問の森下丈二さん、日本鯨類研究所理事長の藤瀬良弘さん、(一社)日本捕鯨協会理事長の谷川尚哉さん、太地町漁業協同組合代表理事組合長の小畑允規さん、講演にも登壇した貝良文さんの5名が「太地の捕鯨と今後について」をテーマに話し合いました。
加藤さんから森下さんへ「太地の捕鯨食文化をどのように感じていますか」の質問に「日本に限らずすべての捕鯨をやっているコミュニティーの最大の課題は次世代への継承です。どうやって継承していくか。太地町はうらやむ特徴があります。太地はいいことをたくさんやっている。一つネタがあれば町は存続する。ひとつは長期総合計画、長期戦略、利益還元の配分、利を受けるのがクジラの関係者だけでなく町全体にいきわたる仕組みで太地はうまくいっている」と語りました。
今後の太地事務所での活動が期待される日本鯨類研究所の理事長である藤瀬さんへの質問では「今後太地をベースにやっていきたい研究の展望は」との質問が飛び「商業捕鯨を行うにあたっての捕獲枠を算出しないといけないという役割。捕鯨業を安定的に行う為の資源の管理。太地町に日鯨研が来たという事で、いままで大型鯨類を扱っていたけれど今後は小型鯨類も合わせて研究をしていきたいと思っています。支援研究だけでなく食文化について啓発活動も行い、クジラの博物館での研究とさらにその先のクジラの研究の面白さをPRしていきたいなと思っております。」と今後の展望を語りました。
講演の後には懇親会が開催され、今年から商業捕鯨が再開したナガスクジラの刺身など、様々なクジラ料理が並びました。おいしいクジラ料理を楽しみながら、3年ぶりにあう顔ぶれを喜び、クジラの食文化について語りあっている様子でした。
今回のフォーラムは古式捕鯨発祥の地としてクジラと共に生きてきた太地ならではの内容となり、今後‘‘クジラの学術都市’’として発展していく町づくりに期待が膨らみます。
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