耳ヨリくじら情報
昔はどこでも食べられていた鯨料理ですが、鯨肉の供給量が少なくなってから飲食店のメニューからは姿を消していました。しかしお店のメニューの差別化や2019年の商業捕鯨再開の後押しがあり、鯨肉メニューを提供する飲食店は少しずつ増えています。鯨肉料理専門店はもちろん、お酒に合うさまざまなメニューを提供している居酒屋でも、竜田揚げやベーコンを楽しめるようになってきました。なかでもユニークなメニューがあるのは、東京・三鷹の焼鳥屋『鶏坊主』。地元常連客に愛されている焼鳥屋で、一体どんな鯨肉料理が食べられているのでしょうか? さっそく紹介していきます。
プロボクサー引退後、焼鳥店大将として独立することを目標に修業を開始
『鶏坊主』がオープンしたのは、2017年8月のこと。店を切り盛りする大将の我孫子正吉(あびこまさよし)さんはなんと元プロボクサー。輪島功一スポーツジムに所属して活躍した後、焼鳥屋の大将として独立する目標を掲げて、都内数店舗の焼鳥店で修業を積んできたといいます。
各店での修業を通して、鶏によって味や食感に大きな違いがあることを知った我孫子さんが特に気に入ったのは、山梨県が誇る銘柄鶏「健味どり(けんみどり)」。富士山や南アルプス連峰を望む大自然のもと、純植物性飼料を食べてストレスフリーに育った鶏は、臭みがまるで感じられず、口当たりはとってもやわらか。「自分の店でもこの鶏を提供していきたい」と心に決めていたといいます。
焼鳥は全品200円台だから気軽に何本も楽しめる
こだわりの焼鳥は、げんこつ、かわ、さえずり、ぼんじり(以上200円)、せせり、はつ、ればー、ねぎま、手羽、つくね、やげん、ささみ、ささみ(以上220円)、心のこり(ハツモト)、ソリ(以上260円)のうれしい価格設定。日本酒から焼酎、ワインまでドリンクの種類も豊富なので、仕事帰りにふらりと立ち寄って焼鳥片手にお酒を楽しんでいくお客さんも多いのだとか。
焼きあがるのを待つ時間も楽しめるように一品料理もバラエティ豊かに取り揃えています。そのなかに、2種類の鯨肉メニューもラインナップされているのです。
鯨肉専門店をオープンした小学校の同級生を応援したかった
1品目は、「くじらの赤身刺」(1,000円)。丁寧に血抜きしてから小さくカットして急速冷凍させた赤身は、注文が入ってから解凍するため、肉厚でクジラ特有の臭みは皆無。しかも、『くじらタウン』ではおなじみの、『くじら屋 らじっく』(以下、『らじっく』)から仕入れているため、品質の高さもお墨付きです。
聞けば、なんと『らじっく』店主の板花貴豊さんと我孫子さんは小学校の同級生。我孫子さんのほうが一足先に自身のお店を開店していたことから、「独立の大変さがわかっていたので、応援したいという気持ちから、商品を仕入れさせてもらうことにしました」と明かしてくれました。
焼鳥もクジラも良質なものであれば万人に喜んでもらえると思う
仕入れ前にはもちろん、我孫子さんも『らじっく』のクジラを試食。健味どり同様、臭みを感じることなく、素材の豊かな味わいを楽しめたため、“これならお客さんにも喜んでもらえそう”と直感したといいます。「クセがあるものは、それはそれで好む人もいるけど万人受けはしないですよね。うちでは、みんなに“食べやすい”と思ってもらえるものを出したいと思っているので、その条件にぴったり当てはまりました」と我孫子さん。実際、メニューに加えてからは、常連のお客さんたちにも人気なのだといいます。
そしてもう1つの鯨肉メニューは「くじらの皮キムチ」(500円)。板花さん考案のこのメニューは、クジラの本皮をキムチ和えにしたもの。コリコリした食感と濃厚な旨みが掛け合わされた贅沢なおつまみで、これまたお酒が進みます。
焼きたてジューシーな健味どり、赤身刺、健味どり、くじらの皮キムチ……と交互に食べ進めたら、幸せな気持ちも倍増間違いなしですね。オリジナルラベルの芋焼酎「鶏坊主」や日本酒とも相性ばっちりです!
ちなみに、家族や友だちと一緒の来店はもちろん、ひとりでの来店でも、我孫子さんや常連のみなさんがフレンドリーなので楽しい時間を満喫できるので、ぜひ気軽に来店してみてくださいね。
■鶏坊主
住所:東京都三鷹市下連雀3-21-11
電話:0422-24-7975
定休日:火曜日
営業時間:[月・水・木・金]17:00~23:00(L.O.22:00)
[土・日]16:00~23:00(L.O.22:00)
※営業日や定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください
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