耳ヨリくじら情報
3児のママとなった今も変わらず、チャーミングな笑顔でその場にいるみんなを和ませてくれる料理研究家・森崎友紀さん。彼女の抜けるように白い肌を見る限り、肌トラブルとは無縁なのだろうと想像させられますが、実は幼いころからアトピーに悩まされ続けてきたのだとか。しかし、それがきっかけで食べ物と身体の関係について考えるようになっただけでなく、その先に料理研究家や管理栄養士への道が続いていたといいます。食材やその調理法が身体に及ぼす影響を身をもって体感してきた彼女にとって、栄養豊富な鯨肉はどんな存在なのでしょうか? お話を伺いました。
食べ物によって身体の状態が変わると知ったことで食への関心が深まった
――森崎さんは子どものころから料理することが好きだったのですか?
森崎「大好きでした。もっというと、料理を食べることによってどういうふうに身体が変化するかにも興味がありました。私、子どものころからアトピー体質で、お医者さんに“(病気とは)一生付き合っていかないといけないよ”と言われていたのですが、たまたま近所の先生が中医学に精通されている方で、食事を改善することの大切さを教えてくれたんです。アトピーは症状が強く出ると皮膚が象みたいに固くなるのですが、ステロイドを使って症状を抑えても必ず再発してしまうため、“身体にいい食事を摂ることで症状を出にくくしていこう”と導いてくれたことにより、食べるものに興味を持つようになりました。さらに、薬剤師として働いていた母親の友だちに管理栄養士がいたことで、管理栄養士の仕事についても知ることができたため、自然と将来の目標も決まっていきました」
炭水化物もタンパク質も脂質もバランスよく摂ることが理想
――実際、食べるものによって身体の調子は大きく変わったのですか?
森崎「食材によっても異なりますし、食べる時間によっても体調が変わってきました。わかりやすいたとえでいうと、同じカロリーのものでも、朝に食べるのと夜中に食べるので全然違いますよね? 遅い時間に食べると翌朝まで胃もたれが続いて体調を崩しやすいし、食事の時間が不規則なのもよくありません。食材に関しては、“これさえ食べておけばいい”というものはなくて、やはりバランスのいい食事が一番大切。炭水化物もタンパク質も、脂質もビタミン・ミネラルも摂取するのが理想です。そう聞くと“準備するのが大変”と思うかもしれませんが、たとえば具材たっぷりの汁物があればいろんな栄養が摂れるから、あとはご飯を炊くだけでいいんです。パンや麺もいいけど、やっぱり日本人の身体には米が合っているので、お米をいただくことも大事にするといいですよ」
クジラ料理を家庭で作るなら、おすすめはスパイスをたっぷり使ったカレー
――クジラをいただくときも、いろんな食材と一緒にいただくのが理想ですか?
森崎「もちろんです。家庭でいただく場合、一番のおすすめはスパイスを使った料理です。クジラには独特のニオイがあるから、特に赤身は、しっかり下処理したうえでスパイスと一緒に煮込むと、クセがなくおいしく仕上がります。カレーなんてぴったりですね。クジラってインド料理ととっても相性がいい食材なので、家庭で料理する場合も、日本の昔ながらのもったりしたカレーではなく、インド風のしゃばしゃばしたタイプがおすすめです。下処理することとスパイスを使うこと以外に、こまめにアクを取り除くことも大事です。丁寧にアク抜きすることで、クジラのおいしさがぐっと増します」
味噌を使った甘めの味付けもクジラと相性抜群
――スパイスのほかにはどんな調味料と相性がいいですか?
森崎「和食の味付けが好きなら、ぜひ味噌と合わせてみてほしいです。大和煮も甘辛な味付けですが、クジラって甘みとの相性がすごくいいんです。なので、塩分の強い味噌ではなく、西京味噌などのしっかりした甘みが感じられる味噌を使うとおいしく仕上がりやすいです。汁物にするなら、カレーを作るときと同じように、赤身をしっかり下処理してから、野菜などの好きな具材も一緒に火にかけてくださいね」
クジラベーコンの独特の味わいが、子どものころから大好きだった
――カレーも味噌汁も家庭でも簡単に作れそうですね。
森崎「そうですよね。でも、昔と比べてクジラは高くなっているから、気軽に買えないという人も多いように思います。私が子どものころは、地元・大阪ではスーパーでもよく売られている食材だったからか、クジラベーコンが大好きな母が、家でもよく食べていたことを覚えています。母はお酒が大好きなのでそのアテとして食べていたんですけど、私も隣で分けてもらってつまんでいました(笑)当時から、クジラベーコン特有のくさみが大好きだったんですよ。クセがあるので好き嫌いは分かれるかもしれないけど、ハマる人はすごくハマるおつまみですよね」
子どもが嫌いな食べ物も、気にせず食卓に出しているとその日の気分で食べてくれる
――子どものころの家庭の食事も影響するかもしれませんね。
森崎「そうですね。嫌いなもの、苦手なものを食卓に出さないでいると一生食べなくなると思うので、うちは、子どもが“嫌い”と言ったものでも出すようにしています。でも、子どもって一度“嫌い”って言っても日をまたぐと好きになったりするんですよ。好き嫌いが変わることもあるし、調理法を変えたらおいしく食べてくれることもあるので、私も楽しみながらいろんな料理を出しています。ただし、無理矢理食べさせると子どももイヤな気持ちになるので、“今日は食べなかったけどあしたは食べるかもしれないな”くらいの気持ちでいるのがいいと思います」
クジラは、竜田揚げや肉じゃがといった家庭料理とも好相性
――クジラ料理も、家庭の食卓を通して好きになる子どもが増えてくれたらうれしいです。
森崎「鉄分豊富で身体にもいい食材なので、もっと安く手に入るようになれば、きっと多くのご家庭で楽しんでもらえるようになると思います。ニンニクと生姜、お酒で臭みを取って竜田揚げにしてもおいしいし、甘辛い味付けの肉じゃがにもぴったり合うのでぜひ試してほしいです」
▶森崎友紀さん
森崎 友紀(もりさき・ゆき)
Webサイト
管理栄養士・製菓衛生師・中医薬膳指導員の経験を生かし、初心者でも楽しめる各国のレシピや「アンチエイジング」「ダイエット」「妊婦・授乳婦」の簡単レシピを考案。身近な食材でお洒落な食卓を演出。