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くじらタウンではこれまで、一般財団法人「日本鯨類研究所」所蔵のクジラアイテムを紹介してきましたが、今回から数回にわたって、千葉県南房総市の道の駅『WA・O!』に隣接するクジラ資料館『勇魚(いさな)文庫』が所蔵するクジラ関連のアイテムをご紹介します。同資料館所蔵のアイテムはすべて、日本最高峰のクジラコレクターである細田徹さんが世界中から集めたもの。骨董市やeBayなどのあらゆる手段を使って探し求めたアイテムのなかには、とっても貴重なものもあるんですよ。そのなかから第1回目は、クジラのヒゲを原料とするものをピックアップしてご紹介します。
まずご紹介するのは、江戸時代に作られた「古代李満弓」(写真上)という携帯用・非常用の弓です。弓と矢を入れる台の部分はセミクジラのヒゲ製。紀州(現在の和歌山県和歌山市)の林李満という兵法家(ひょうほうか:戦国時代に武芸を教授することによって生計を立てていた者のこと)の作であることからこのような名前で呼ばれています。総称として、「籠弓」とも呼ばれています。
「古代李満弓」は、弦をかけて弓と矢が一体になった状態で大名の床の間などに設置されていました。なぜかというと、敵の襲来などの緊急事態に瞬時に発射するためです。コンパクトなサイズで、座ったままでも射ることができます。
続いては、クジラのヒゲで作られた大型の花籠(写真上)です。高さは持ち手を含め52㎝もあります(新聞紙の縦の大きさくらい)。時を経てもほとんど劣化はみられませんが、とてもいい味が出ていますよね。現在では、花篭はクジラのヒゲではなく竹で作られています。
こちらは、クジラのヒゲで作られた折り畳み式携帯用枕(写真上)です。旅行に持って行くために作られたもので、このままでは固いため、手ぬぐいを巻いたうえで頭を乗せます。高さが高い方が男性用。江戸時代には、男性も髷(まげ)を結っていたため、低い枕では髪型が崩れることからこのような高い枕で寝ていたのだとか。現代を生きるわたしたちの感覚からしたら、首を痛めてしまいそう! と心配になってしまいますよね。
そしてこちらは、旅行用に作られた折り畳みできる鏡台(写真上)。こちらもクジラのヒゲで作られています。
続いては、今回紹介するもののなかでももっとも珍しい「鯨尺(くじらじゃく)」(写真上)。江戸時代のお嫁入り道具です。“鯨尺”とは単位で、1尺の1.25倍の長さになります。なぜこのような単位が生まれたかというと、反物の計り売りにおいてサービスするために、1尺分を気持ち長く測定できるような物差しとして登場したのだとか。もちろん、原料はセミクジラのヒゲ。なんとも遊び心がありますね。
こちらは、クジラのヒゲでできた将棋の駒(写真上)です。ナガスクジラのヒゲを貼り合わせて作っています。
続いては、佐世保で作られた美しいペーパーナイフとつけペン(写真上)。クジラのヒゲを原料とする“鯨べっこう”としては、アクセサリーなどさまざまなアイテムが作られていますが、どれも光沢があり見た目にとても美しいのが特徴です。
こちらは、クジラのヒゲで作った爪楊枝(写真上)。脱色しているため、このような白い色になっているのだとか。パッケージデザインもすごく凝っていますね!
最後に紹介するのはこちらの黒い棒状の物体(写真上)。これは一体何だと思いますか? 答えは、舌掻き(舌クリーナー)。よく“しなる”クジラのヒゲは、舌の苔を取るには最適な素材。昔の人たちはよくこの使い方を思いついたなと感心させられますね!
気になるアイテムはありましたか?クジラの工芸品は奥が深く、時代を感じる逸品に巡り合うとテンションがあがりますね
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